3. 慰謝料の金額相場
不法行為などに基づく損害賠償は、金銭によって精算するのが原則とされています(民法722条1項、417条)。
慰謝料の対象となる精神的損害は目に見えませんが、具体的な事案と過去の裁判例を比較するなどして、被害者が受けた精神的損害を金銭に換算評価します。
慰謝料の金額はケースバイケースですが、事案の種類によって大まかに目安が決まっています。離婚・ハラスメント・交通事故の3つについて、慰謝料の金額相場を紹介します。
3-1. 離婚の慰謝料の金額相場
離婚の慰謝料は、100万円から300万円程度が標準的です。
ただし、離婚慰謝料は必ず請求できるわけではなく、配偶者が離婚の原因を作った場合に限って請求できます。たとえば、配偶者が不貞行為・DV・モラハラに当たる行為をした場合などには、離婚慰謝料を請求可能です。
3-2. ハラスメントの慰謝料の金額相場
ハラスメント(セクハラ・パワハラなど)の慰謝料は、50万円から100万円程度が標準的です。
職場におけるハラスメントの慰謝料は、行為者本人のほか、会社に対しても使用者責任(民法715条1項)に基づいて請求できることがあります。
3-3. 交通事故の慰謝料の金額相場
交通事故の慰謝料には、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類があります。
(1)入通院慰謝料
入院または通院の期間に応じて請求できます。
たとえば骨折で1か月入院し、その後6か月間通院した場合、入通院慰謝料の金額目安は149万円※です。
※「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」別表Iを参照
(2)後遺障害慰謝料
交通事故によるケガが完治せず、後遺症が残った場合に請求できます。
認定される後遺障害等級に応じて、2800万円(1級)~110万円(14級)が目安となります。
(3)死亡慰謝料
交通事故の被害者が死亡した場合に、遺族が請求できます。
被害者が一家の支柱であれば2800万円程度、母親・配偶者であれば2500万円程度、その他の場合は2000万円から2500万円程度が死亡慰謝料の目安です。
なお交通事故の被害者は、上記の各慰謝料以外にも、さまざまな種類の損害賠償を請求できます。請求可能な損害賠償の一例は、治療費・介護費用・休業損害・逸失利益などです。
4. まとめ
「慰謝料」は「損害賠償」と混同されることが多いですが、慰謝料は精神的損害のみ、損害賠償は損害全般の賠償金を意味します。
他人から何か悪いことをされたら、慰謝料だけでなく、それ以外の損害賠償も請求できることを知っておきましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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