改札をスムーズに通過できた!
東急田園都市線の実証実験は、「QRコードで電車に乗れるのか?」という大衆の素朴な疑問に答えるための取り組みと解釈すれば合点がいくのではないか。
QRコードの読み取りの速さ自体は、自分の後ろに控える人を苛立たせるものではなかった。自動改札機をスムーズに通過することができた、というわけだ。
これなら、PayPayや楽天ペイのQRコードでも自動改札機を通れる近未来が実現するのでは……という期待すら抱いてしまった。
具体的にどのような人がQRコードチケットを利用するのか、実際にどれだけの需要があるのかは未知数である。が、此度の実証実験でQRコード乗車の有効性が証明された暁には、この仕組みをQ SKIP以外のサービスに移植してもいいのではないか。
たとえば、旅行予約サイトで東急の路線のデジタルチケットを購入し、そのプラットフォームにQRコードを表示できる……という感じにすれば、利用者も増えるのではないかと筆者は感じている。
「偉大な先駆者」に頼り過ぎた日本人
FeliCaを搭載した交通系ICカードは、既に20年以上に渡って広く利用されている。未だに陳腐化することなく、公共交通機関における決済・乗車手段の第一線に立ち続けているというのは「驚異的」と書くしかない。
が、我々日本人はいささかFeliCa搭載カードに頼り過ぎていたのではないかとも考えてしまう。
筆者は「このキャッシュレス決済銘柄だけを利用していれば、他の銘柄は必要ない」とは書きたくない。どのサービスも人間が作るものだから、必ず突然のトラブルは生じてしまう。Suicaも例外ではなく、何の前振りもなくシステム障害を起こしたり、半導体不足でカードが発行できなくなる出来事も起こって当然だ。
故に、タッチ式クレカやQRコードといった他の手段も整備しておく必要が出てくる。「QRコードでスムーズに改札を通過できる」ということが実証されれば、プラットフォームの改設計はその後でも全く構わないはずだ。
また、「ワンデーパスをQRコードで発行する」という内容だが、これはやはり「QRコードだからこそのサービス」ではないかとも思う。このあたりで棲み分けができるのではないか。つまり、日常の通学通勤には交通系ICカードを、たまの休日に外へ出かける際はQRコードを……という具合である。
現状のQRコード対応自動改札機は、かなり無骨な見た目のせいでSNSでは冷やかされることもしばしば。このあたりも、時間が経てば洗練化されていくだろう。開始間もない実証実験だが、そこには果てしない夢と可能性が詰まっている。
取材・文/澤田真一