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ホームセンターの枠にとらわれない新たなリブランディング戦略でカインズは何を目指す?

2023.09.27

複数の価値観を並走させる、他にはあまり見られないブランディング手法を採用

カインズとnendoの協業プロジェクトがスタートしたのは3年前。nendoとの協業体制については、商品開発やブランディングを委託、受託する関係ではなく、互いのチームが行き来する中で共に進めていくという。

高家氏、カインズ 代表取締役会長 土屋裕雅氏、デザインオフィスnendo 代表 佐藤オオキ氏の三者が協業について語った。

佐藤氏「3年前に店舗を視察した際の第一印象は“僕はやることないな”でした。課題が見つからないと“つんだ”状態になるので、デザイナーとしては最悪です。ただ、オンラインで目的買いができる時代の中、リアルな店舗、リアルな空間の役割は今後どうなっていくのだろうと考えていたこともあり、唯一ここがアップデートできる点だと感じました。

カインズは商品をピンポイントで見つけられるし種類も豊富で、目的買いだととても買いやすい形です。そこからさらに、予想していないものを思わず買ってしまう衝動買い、ついで買いといった、点や線ではなく面的な買い物体験になっていけば、よりカインズの魅力が増すのではないのかなと思ったんです。

商品への考え方が売り場に投影されており、カインズはここに強みがあります。価格と機能とデザインのバランスが素晴らしく、サッカーとかで例えると南米のチームのような個人技で局面を打開していくみたいな印象。その強さに、横の繋がりのような連動性が生まれると、より戦略の幅が広がるのではと感じました」

高家氏「この3年間nendoさんと一緒にやってきて、この協業が単に商品のデザインや、商品開発だけでなく、その商品からどんなくらしを実現するのか、それを売るためのビジネスモデルには何が必要なのかを考え続けていきました。

商品に留まらず、価値を作るビジネスそのものをどう作っていくのか、協業において実現したい目的はそこにあると思っています」

佐藤氏「デザイナーはブランドコンセプトをできるだけ絞り込み、磨きをかけて、それをあらゆるタッチポイントで統合していくという考え方が基本ですが、今回は複数のコンセプトを並走させるという考え方で、そこに至るまでの過程がとても印象に残っています。

例えばコーヒーひとつでも、コンビニのワンボタンでいつでも飲める手軽さや利便性もある一方で、週末に豆から挽いてハンドドリップして手間をかけて楽しむ豊かさもあります。あえて言うならカインズはどちらかと土屋さんに聞いたところ、どっちもだとおっしゃった。むしろ、その間の喫茶店でゆっくりくつろぐ時間や空間もあると。コーヒーというキーワードひとつ取ってもいろいろな価値があり、それを全部受け止めるようなスタンスがカインズなのかもしれないというお話がとても印象に残っています」

土屋氏「やるのだったら世界に出せるモデルを作りたいとオオキさんと話していました。DIY=日曜大工ではないという思いがあって、もっと広い意味でDIYを捉えて、能動的に関与することによって、くらしがもっとよく変えられるのではないかという話もよく覚えています。

ホームセンターはペンキが剥げたから塗らなきゃいけない、蛇口が壊れたから直さなきゃいけないと、マイナスからゼロにするために必要とされている業態です。それももちろん大事ですが、ゼロからプラスにする、もっとくらしを良くしようという方向性も強化しなくてはいけないと長年言い続けてきました。

日本のホームセンターは、DIYに特化している海外と比べ、様々なカテゴリーを扱っている特殊性があります。これを逆手に取り様々なカテゴリーをDIYと捉えて、くらしに能動的に関与することで変えられる状況を作るためには、商品や組み合わせ、選択肢、もっと手軽にできるためのサービスが足りないと感じていました。

従来のDIYからさらに広げてくらしを変えられるものを、商品だけではなくサービスモデルとしても提供できることがカインズのあり方ではないかと考えています。

例えばペットを飼っているお客様に対して、私たちが一方的にデザインやサービスを押し付けるのはダメだと思うんです。ユーザー側の声を徹底的に取り上げて商品やサービスに活かしていく。カインズはデジタルも強い体制なので、この点も活かして作り上げていけば世界にないモデルになるのではないかと考えています」

佐藤氏「単一の価値観を磨き上げていくブランディングは世の中に多くの事例があり、自分もたくさんやらせていただいていますが、複数の価値観を並走させるというのはほとんど記憶になく、あまり見たことがないブランディング手法です。

最近は、インクルーシブ、ダイバーシティーといった言葉をよく聞きますが、これらは特定の価値観を押し付けないとか、オプションの範囲を狭めないことだと、僕自身は解釈しています。

カインズのアプローチはそれにかなり近く『これがうちのブランドです』と押し付けたりせずに、『こういう価値もああいう価値もあるから好きなのを選んでください』『好きなものを組み合わせてください』という懐の深さのあるブランディングです。

このブランディングは新しさしかないと感じていて、その結果、年齢、家族構成、所得などと関係なく、多くの方々に愛されるカインズというブランドになっていく可能性が非常に高いと思っており、期待感しか僕の中ではないですね」

【AJの読み】価値を付加させて進化させてきたカインズのブランド戦略

高家氏は様々な取り組みで変化を続けているカインズについてこう話した。

「創業以来進化してきたチェーンストアのオペレーションをベースとして、SPA宣言でオリジナル商品が加わり、IT小売業宣言でIT・デジタルのソリューションが加わった。そこにnendoさんとの協業でプロダクトブランドが加わり、そこから新しい商品が生まれる。変わっていくというよりも、価値が付加されてどんどん進化を続けていると言える」

SPA宣言を行った2007年度から2022年度までの間にオリジナル商品の売上高が約 2.3倍に伸長するなど、カインズの進化は顧客からも高い評価を得ている。そこに新たに、グローバルで多岐にわたった分野のデザインで活躍をしているnendoとの協業が加わることで、どう変化がもたらされるか期待したい。

文/阿部純子

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