およそ3年ほど前、ある日本人クリエイターが制作した立体アートがYouTubeで話題になった。
クリエイターの名は「たらそほびや Thalasso hobbyer(@THobbyer)」さん。少し変わったその名の語源はタラソフォビア(thalassophobia)という英単語で、「海洋恐怖症」を意味するとか。
響きは何やら穏やかではないが、畏れと美しさが入り混じるたらそほびやさんの作品は海外のユーザーも巻き込んで世界中で視聴された。
そんなクリエイターが新たに公開し、注目を集めているレジン(※)×ジオラマアートがこちらだ。
※ハンドメイドやクラフトの際に扱いやすいように開発された「合成樹脂」。
四季の社と守護者のジオラマ
「四季の社と守護者のジオラマ」は、春夏秋冬をテーマに作られた4対の作品だ。
それぞれの季節に、古びた社とそれを護る “守護者” が存在する。
四季の移り変わりによって自然の風景は変化するが、社と守護者は変わらず共に佇んでいる。
それとも———、
もしかしたら春夏秋冬は全て別次元で、それぞれの世界に異なる社と守護者が存在しているのだろうか?
4体の守護者は同じ生物に見えるが、似て非なるものなのかもしれない。
社はなぜこんな場所にぽつんと建っているのか、守護者はどんな経緯でそれを見守っているのだろうか。
そんな風に、たらそほびやさんの作品には見た人の頭の中に物語を紡がせる不思議な魅力がある。そうして何十年何百年と繰り返されたかもしれない四季の社と守護者」のストーリーを勝手にどんどん空想してしまうのだ。
制作動画は早くも前後編合わせて50万回再生に届く勢いで、世界中のユーザーから感嘆のコメントが寄せられている。
本作品は過去にYouTubeで再生回数1600万回を超えた「忘却の社と守護者のジオラマ」のリメイク版とのことなので、楽しみにしていた古参ファンも多いのだろう。
ご本人のコメントによると「四季の社と守護者のジオラマ」の制作期間はおよそ8ヶ月。
実はもともと5ヶ月かけて作った原型があったのだが、レジン硬化の工程であるミスを犯し「世に出せるクオリティではないと判断」した結果、作り直し(!)している。
そして完成したのが冒頭の4作品というわけだ。
ここまで精巧な作品、それも5ヶ月かけたものをもう1度作り直すとは…ちょっと考えただけでも泣きたくなる手間と労力と精神的ダメージを背負う覚悟が必要に違いない。
「四季の社と守護者のジオラマ」の制作動画にはそのあたりの失敗談(結果的に素晴らしいものが出来上がっているので失敗というには相応しくないのかもしれないがあえて)もカメラに収められているので前後編見ることをおすすめする。
気の遠くなるようなこだわりと技術、そして見る人の心を飲み込んでしまう物語が潜むジオラマの海を、ぜひ体感してみてもらいたい。
■四季の社と守護者のジオラマ 前編
■四季の社と守護者のジオラマ 後編