制作の原点は、タラソフォビア(海洋恐怖症)
名前の由来である海洋恐怖症は、彼の全ての作品に通ずるテーマでもある。
日常生活ではあまり聞かない言葉だが、海洋恐怖症は海や川や湖などに対する「恐怖症(不安障害)」の一種だ。水そのものではなく、海の広大さや深さ、陸からの距離やその深淵に対する恐れの感情を指す。
そもそもたらそほびやさんがジオラマやレジンアートを制作するようになったきっかけもまた「海洋恐怖症」だったという。
「SNSやインターネット上には『海洋恐怖症』をテーマにした写真やイラストがたくさん公開されています。かねてから、それらの画像を見ては『怖い!でもつい見てしまう…』というふうに1人でゾクゾク感を楽しんでいました。怖いのだけれど、なぜか目が離せない。これらの画像には、なにか不思議な魅力を感じていました。
当時、写真やイラストは割と見かけたのですが、それを立体で表現した作品はほぼありませんでした。『これをジオラマやレジンアートで作ってみたら面白いのでは?』と思ったのがきっかけです。」(たらそほびやさん)
そうして3年ほど前に、海洋恐怖症をテーマに掲げて制作をスタートした。昔から細かい作業が得意でものづくりが好きだったため、最初から楽しく取り組むことができたという。今でこそ似たジャンルの動画は珍しくないが、制作をはじめた当初はそのようなチャンネルは他になかったそうだ。
実はたらそほびやさんの作品は、クオリティはもとより登場する生物のデザインやストーリー性が高く評価されている。映像としての人気が高いのも、作品のバックボーンに惹かれる人が多いためだろう。
「祈りの遺跡と守護者のジオラマ」は特にストーリーが絶賛されている作品の1つだ。
本動画のコメント欄には「泣いてしまった」「まさかジオラマ動画で泣くとは思わなかった」など、世界中から感動の声がたくさん寄せられたという。
そんな独自の作風のルーツについて、たらそほびやさんはこのように語ってくれた。
「基本は自分が “怖い” とか “惹かれる” と感じたモチーフを作ります。インターネットやSNSで見つけた画像がインスピレーションのもとになることが多いです。怖くて素敵な画像を見つけたら、その画像の作者様に直接メッセージを送り、制作の許可をいただくこともありますね。
“怖さ” のほかにも、神秘的であったり “美しい!” と感じたモチーフを作ることもあります。制作中、ふと作品のバックストーリーが湧いてくることがあって、それを盛り込んだ動画は比較的評判が良い気がします。」(たらそほびやさん)
自身のインスピレーションに加え、見てくれるファンの声も作品作りに大きな影響をもたらしているという。
「進捗状況をSNSで公開すると、それを見たフォロワーさまが良さそうなストーリーを考えてくださることもあります。そう考えるとSNSのフォロワーさまは制作のモチベーションのみならず、作品づくりをするうえでとても重要で大切な存在かもしれません。」(たらそほびやさん)
さらに、今後手掛けてみたいモチーフについて尋ねてみた。
「メッセージ性を持った作品を多く作りたいと思っています。過去作でいうと、19番『不渇の井戸と守護者のジオラマ』がそれにあたります。これはコロナ禍がインドをはじめ世界中に急拡大しはじめた時期に作った作品でした。
これを作ったことで、インドに住むたくさんの方から温かいお声を頂戴しましたし、インドの視聴者さまがものすごく増えました。テロップではっきりと主張や説明をしなくても、動画を観た方にそれを感じ取っていただけるような作品が目標です。」(たらそほびやさん)
加えて、YouTubeではいまだに「たらそほびやは日本人ではない」と思われている節があることから「これからは “和” をモチーフにした作品も増やしていけたら…」とも思っているのだと教えてくれた。
■たらそほびや Thalasso hobbyer(@THobbyer)さん
日本在住のジオラマアーティスト。水の生き物とThalasso hobbyer(海洋恐怖症)をテーマに作品を制作。
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文/黒岩ヨシコ
編集/inox.