DIME MAGAZINE
2023年度の最低賃金額（時給）の改定額が各都道府県より公表された。改定後の最低賃金は全国平均で1004円。東京、神奈川、大阪、埼玉、愛知、千葉、京都、兵庫の８都府県では時給が1000円を超え、多くの労働者に「時給1000円以上」が適用されることとなる。
30代、40代にとっては時給1000円と聞くと、憧れの時給だったかもしれないが、もはや時給1000円は当たり前の時代になっているのである。
「イーアイデム」等の求人メディアで企業の求人をサポートし、労働雇用状況や社会の課題にも目を向けた調査・分析も行なう株式会社アイデムのデータリサーチチーム所属に所属する古橋孝美（ふるはしたかみ）さんに話を聞いた。
労働市場のプロは、今年の最低賃金改定をどのように受け止めたのだろうか。
最低賃金の引き上げは働く人には朗報
正社員の初任給が最低賃金に近づいている
最低賃金と聞くと、アルバイトやパートタイムなど「時給」体系で働く労働者は身近に感じる一方で、「月給」で働く会社員などは、自分とは無関係の話として受け止めていないだろうか。
「言わずもがな、最低賃金は『時給』だけに適用されるものではありません。『日給』や『月給』なども、時間あたりの賃金が最低賃金を割らないように設定する必要があります。特に月給の場合には、十万円単位の数字でもあることも手伝って、時間当たりの賃金が『最低賃金以上の額になっているか？』認識しづらいものです」（古橋さん。以下、カッコ内は同様）
例えば、厚生労働省が公表している2022年の賃金構造基本統計調査によると、新規学卒者の高卒初任給は男女計で月給18万1200円である。仮に年間休日数を120日として時給を計算すると以下のようになる。
アイデム人と仕事研究所「正社員初任給が最賃割れ!? 混乱必至の2023最低賃金」より
もちろん高卒初任給の平均は地方も含めた数字なので、あくまで参考程度ではあるが、「初任給18万円」は東京都と神奈川県の最低賃金を割り込んでいる。
「新卒の初任給とフルタイムのアルバイトのお給料の差が減ってきています。だから非正規雇用がいい、正社員がいいということではありませんが、正社員の場合でも長年、お給料が相場に比べて低め、かつ変化していないのであれば、最低賃金に近づいてきている可能性があります。
政府は2030年代半ばまでに、最低賃金の全国加重平均1500円を目指すと掲げています。東京や神奈川であれば時給2000円近いかもしれない。その時給ベースで考えると、初任給で30万円スタートという社会になってくる。もちろん企業として労働者の給料が最低賃金を下回らないように給与体系を更新していくことにはなるが、労働者側も自分の給料や待遇が適当なものなのか確認をしてほしい。また企業からすれば『高い賃金なら優秀な人を』となるので、それに見合うようキャリアアップなど主体的に取り組む、など働き方について会社に任せるだけでなく、自分自身でも考えてほしい」
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