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SBIと楽天が新NISAで手数料を無料化、避けられない減収をどうカバーする?

2023.09.20

2024年1月から新NISAが始まります。

投資枠が大幅に拡大され、非課税期間が無期限になります。大盤振る舞いとも言える緩和策に、「貯蓄から投資へ」と叫び続ける政府の本気度が垣間見えます。

新制度のスタートに色めき立っているのが、口座獲得を虎視眈々と狙う証券会社。口座開設を促すテレビCMを頻繁に目にするようになりました。

このタイミングで勝負に出たのがネット系証券会社の2台巨頭であるSBI証券と楽天証券。この2社が手数料無料を宣言しました。

口座開設数1000万を突破したSBI証券

大手証券会社は売買手数料を主な収益源としてきました。窓口や電話で注文を受け付けるタイプの証券会社は、高額な手数料を徴収しています。

店頭での取引だと、野村證券は国内株式100万円の取引で手数料が1万2188円。大和証券は1万2650円です。

証券業界の常識を打ち破り、価格破壊を起こしたのがネット系証券会社でした。SBI証券と楽天証券は100万円の取引手数料が535円。マネックス証券に至ってはわずか487円です。

更にSBI証券は9月30日から、楽天証券は10月1日から日本株の現物取引などの手数料を無料にします。

SBI証券は2019年から手数料無料の「ネオ証券化」構想を発表しており、証券会社各社はいつ始まるのかと戦々恐々としていました。新NISAのタイミングで、それを現実のものとしたのです。

楽天はそれに追従しました。その一方で、マネックス証券はすぐさま現行の手数料を維持する方針を表明。手数料の無料化はどこかで調整が必要になると語りました。

SBI証券と楽天証券が強気の姿勢を見せているのは、すでに獲得している口座数が多いためでしょう。2023年3月末時点でSBI証券は1千万口座を超えており、楽天証券は860万と肉薄しています。マネックス証券は220万程度しかありません。

※SBI証券「決算説明資料」より

積み立てNISAによる証券会社への恩恵

口座数が多いと、何が有利なのでしょうか?詳しく見てみましょう。

SBI証券の2023年3月期のインターネットによる株式取引の手数料収入は394億5000万円でした。営業収益全体のおよそ2割を占めています。手数料の無料化はこの金額が大幅にダウンするため、痛手になるのは間違いありません。

注目したいのが、投資信託の代行手数料。現行のNISAで取り扱っている投資信託の数は2500を超えます。SBI証券のNISA口座においては、買付・売却にかかる手数料は発生しません。しかし、信託報酬がかかっています。信託報酬は資産管理に必要な手数料のことで、運用会社は販売会社に対して代行手数料を支払っています。

SBI証券は、三菱UFJ国際投信やニッセイアセットマネジメント、大和アセットマネジメントなど、様々な資産運用会社の投資信託を扱っています。口座数を拡大することで積立投資をする人が増えると、SBI証券は投資信託の代行手数料を太くすることができるのです。

SBI証券は2020年3月時点での口座数は500万程度でした。2022年3月期の投資信託の代行手数料は171億1100万円。口座数が倍増して1千万口座を突破した2023年3月期は321億4800万円。2倍近くまで膨らんでいます。

SBI証券は3000万口座の開設を目標にしています。たとえ手数料を無料にしたとしても、口座数を引き上げることができれば、その分の稼ぎを得ることは可能なのです。しかも、新NISAの積立枠は拡大します。その口座獲得は大きな恩恵が得られるのです。

最悪のタイミングで手数料の無料化を迫られた楽天証券

SBI証券がいち早く手数料を無料にできたのは、口座数が多いからという理由だけではありません。収益構造として手数料への依存度がネット系証券会社の中でも低いことが挙げられます。

SBI証券だけが、唯一2割程度に抑えているのです。松井証券に至っては、収益の半分を手数料に依存しています。

※SBI証券「決算説明資料」より

楽天証券は約3割を占めています。手数料無料に踏み切ったのは苦渋の決断だったでしょう。収益力が大幅にダウンする可能性があるためです。

しかも、楽天証券は2023年7月4日に東京証券取引所に新規上場申請を行いました。大赤字が続いている楽天グループにとって、楽天証券は虎の子とも言える会社。大型のIPOになることが予想されますが、手数料無料による収益性の悪化は悪材料以外の何ものでもありません。最悪とも言えるタイミングで難しい決断を迫られた楽天証券が、上場においてどのような説明を行うのか。一番の注目ポイントとなるでしょう。

口座数の獲得で出遅れているマネックス証券は、大手2社とは全く別の方向へと歩みを進めています。それが「アセマネモデル」です。

資産形成を支援することで顧客満足度を高め、その対価を得るというものです。投資情報や分析機能を充実させて資産形成のプラスになる要素を提供し、米国株、投資信託のラインナップも充実させることで分散投資を促進しています。

SBI証券と楽天証券、マネックス証券は新NISAのスタートで、口座数の差が大きく開くのは間違いないでしょう。

マネックス証券は2024年1月にイオン銀行と業務提携し、マネックス証券が扱う投資信託をイオン銀行投資信託口座で購入できるようになります。マネックス証券は今後、個人の口座獲得よりも、大口の取引先とのパイプを開通させることに注力すると予想できます。

手数料無料の消耗戦で弱体化した証券会社が現れ、ダイナミックな業界再編が起こることもありえます。

取材・文/不破 聡

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