日常生活ではあまり耳にすることはないですが、業界によって重要視されている『ARPU』という言葉があります。ARPUが何を指すのか、計算方法や改善方法と併せて紹介します。混同しがちな『ARPPU』や『ARPA』との違いも見ていきましょう。
ARPUの意味とは?
主にビジネスシーンで使われる『ARPU』とは、どのような意味があるのでしょうか?ARPUが重視される理由や背景と併せて紹介します。
1ユーザー当たりの平均売上額を示す
「アープ」と呼ばれる『ARPU』は、英語の『Average Revenue Per User』の頭文字をつなげた略語です。「エーアールピーユー」と呼ばれることもあります。
企業の業績を正しく判断する指標の一つで、「1ユーザー当たりの平均売上額」を示します。主に携帯電話業界やインターネット・アプリ業界などで使われていますが、近年はその他の業界でも重視されています。
ARPUが重要視される理由・背景
売上向上には、新規ユーザーを増やす、もしくは1ユーザー当たりの売上を増やす方法があります。しかし、近年は市場が少数の大企業によって占められており、新規ユーザーを増やすのが難しい現状があります。そのため、1ユーザー当たりの売上額であるARPUが重要視されるようになっているのです。
また、ARPUは、『SaaS(Software as a Service)』ビジネスにおいても重要になります。SaaSは、ユーザーがインターネット経由でソフトウエアを利用できるクラウドサービス事業です。SaaSビジネスでは、売上を維持するために既存ユーザーに継続利用をしてもらう必要があり、ARPUが重要な指標となるのです。
ARPUの計算方法
ARPUは、どのように算出するのでしょうか?基本的な計算方法を紹介します。ビジネスモデル別の計算方法に応用できるので、覚えておきましょう。
基本となる計算式
基本となる計算式は、『合計売上金額 ÷ ユーザー数』です。合計売上金額をユーザー数で割って出た数字がARPUです。
例えば、合計売上が10万円でユーザー数が10人の場合は、『10万円÷10人』で算出して出た1万円がARPUとなります。
ただし、この計算式は全てのビジネスモデルに当てはまるわけではありません。ビジネスモデル別の計算方法については後述するので、確認しましょう。
ARPPU・ARPAとの違い
平均売上を示す指標となるものには、他に『ARPPU』と『ARPA』もあります。言葉が似ており混同しがちなため、それぞれどのようなものなのか見ていきます。
「ARPPU」は有料課金ユーザー1人当たりの平均売上高
『ARPPU』は、『Average Revenue Per Paid User』の頭文字をつなげた略語です。課金ユーザー1人当たりの平均売上高を指します。
ARPUが課金・無課金に関係なく全てのユーザーを含んでいるのに対し、ARPPUは課金ユーザーに限定しているというのが大きな違いです。限定することで、より正確な売上金額を知ることができます。
例えば、ゲームアプリなどでは課金と無課金のユーザーが混在していることが珍しくありません。売上を伸ばすためには、課金ユーザーに着目し分析することが大切なため、ARPPUが使われるのです。
「ARPA」は1アカウント当たりの平均売上高
『ARPA』は、『Average Revenue Per Account』の頭文字をつなげた略語です。1アカウント当たりの平均売上を指します。
ARPUが1ユーザー当たりの平均売上であるのに対し、ARPAは1アカウント当たりというのが違いです。サービス契約者などアカウントごとの平均売上を把握したいときに役立ちます。
例えば、近年は携帯電話サービスなどでは、1アカウントで複数のユーザーが存在していることは珍しくありません。ARPUは、そのようなアカウントごとに課金される仕組みのサービスなどを行っている企業で取り入れられています。
課金方式ごとの3つの計算方法
前述したARPUの基本となる計算方法は、全てのビジネスモデルに当てはまるわけではなく、課金方式によって異なります。課金方式ごとの計算方法を見ていきましょう。
ユーザー課金方式の場合
ユーザーのサービス使用状況に応じて単価が決まる、ユーザー課金の場合は、『ARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均売上高)× PUR(課金ユーザー率)』です。
ARPPUは、商品単価・1回当たりの平均購入数・購入頻度で構成されています。例えば、あるスマホのゲームアプリでは、1カ月の間に課金するユーザーが30%いるとします。このユーザーたちが使う1カ月当たりの平均金額が500円、平均購入数が3点、購入頻度が2回の場合の計算方法は下記の通りです。
500×3×2=3,000円(ARPPU)
3,000×30%=900円
広告表示課金方式の場合
広告を表示させることで収益を得る、広告表示課金の場合は、『CPM(広告表示単価)×エンゲージメント(1ユーザー当たりの広告表示機会数)』で算出します。
CMSは、広告表示1,000回当たりの費用のことです。また、エンゲージメントは、アクセス数・滞在時間・頻度などで構成されています。
例えば、あるサイトのCPMが300円で、エンゲージメントが1日に10回の場合は、以下のようになります。なお、CMSは1,000で割り、1回当たりの費用を出しましょう。
10×(300÷1,000)=3円
広告クリック課金方式の場合
ユーザーが広告をクリックすることで収益が発生する、広告クリック課金の場合は、『CPC(1クリック当たりに発生する売上高)×CTR(クリック率)』で算出します。CTRは、総クリック数を広告表示回数で割って出た数です。
例えば、CPCが30円で、1日の広告表示回数が10,000回、総クリック数が1,000回の場合は以下のようになります。
CTR:1,000÷10,000=0.1(10%)
30×0.1=3円
ARPUを最大化・改善する方法
ARPUを高めることは、収益をより上げていくための大切なポイントです。具体的にどのようにすれば、最大化できるのでしょうか?改善する方法を3つ紹介します。
顧客ロイヤリティの向上
ARPUを最大化するには、顧客ロイヤリティを向上させることが重要です。顧客ロイヤリティとは、顧客の企業や商品、サービスに対する信頼や愛着のことを指します。信頼や愛着を得られれば、リピーターやサービスの利用頻度、単価の増加につながります。
顧客ロイヤリティの向上に活用されている指標『NPS(顧客推奨度)』は、企業やサービスに対するロイヤリティの度合いを数値化したものです。可視化することで、より具体的に把握することが可能になります。
NPSを知るためには、まず、顧客に他の人にすすめる可能性があるかといった推奨度を図る質問を含めたアンケート調査を実施します。その調査結果を基に、『推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)』で算出します。
課金ユーザーを増やす
課金・無課金のユーザーが混在しているサービスで、ユーザー当たりの平均売上高を向上させるには、課金ユーザーを増やすことが大切です。できるだけ多くの人に課金ユーザーになってもらう必要があり、そのためには差別化を図ることが有効です。
例えば、課金ユーザーになることで優先的に予約ができる、1日早くセールに参加できるなどのサービスがあります。他にも、送料が無料になる、配達日が指定できるなども差別化につながるでしょう。
このようにさまざまな差別化で、課金ユーザーになるメリットを明確に示すことが大切です。
既存顧客へのアプローチ
『アップセル』と『クロスセル』を狙って、既存顧客にアプローチすることで、ARPUを向上させることができます。アップセルは、ワンランク上のプランやオプションの追加購入を促す方法です。例えば、よりランクの高いクレジットカードやジムの会員などに促すなどがあります。
クロスセルは、使用中のサービスやアプリの他に、関連するサービスを利用してもらう方法です。例えば、オンラインショッピングサイトで、購入した商品に関連した商品が「おすすめ」として表示されるなどがあります。