トニー・ブラウン氏の手腕とともに
キックによる得点をどれだけ重ねられるのかに注目
バーナード・フォーリーさん
1989年生まれ。日本国内におけるラグビーリーグワンのクボタスピアーズ船橋・東京ベイに2019~2020年シーズンから加入。2022年、背番号10を背負う中心選手として活躍。同リーグの得点王になるなど、チームのリーグ制覇に貢献した。ラグビーワールドカップには、2015年大会と2019年大会にオーストラリア代表として出場。同チームのキャプテンを務めたこともある。
――2019年から日本国内のラグビーリーグワンに所属しているフォーリーさんが見ていて感じる、日本人ラグビー選手のいいところを教えてください。
日本国内のラグビーリーグワンでは、すごくエキサイティングなことが起こっていると思っています。選手たちの中で、ゲームに対する意欲がすごく高くなっている印象です。
それと、ここ数年は世界中から来た優秀な選手たちが同リーグでプレーをしている結果、選手のレベルだけではなく、コーチのレベルも向上していて、チームを強化するプログラムの質やクオリティーも高くなっていると思います。今は特に若年層の中に、すごく頼もしい選手たちも生まれてきています。
――人間性などを含めて、日本人ラグビー選手から学んだことはありますか?
日本人はすごく一生懸命に働こうとする。自分の向上のために様々な仕事をするし、そういった姿勢はすごくすばらしい。それが日本のメンタリティーであり、見ていて非常にいいと思うことです。
もうひとつは、学ぶことに対してすごくハングリー精神があり、スキルセットを積んでいくため、貪欲に学ぼうとしています。最初はなかなかうまくいかなくても、決してあきらめません。常にそうやって学んでいく姿は、見ていてすごく勉強になる。私が所属しているクボタスピアーズ船橋・東京ベイの中でも、そのような取り組みで成長している選手をいっぱい見てきました。
――2015年に行なわれた大会で、日本代表は「プールB」で南アフリカを下して脚光を浴び、今日までの快進撃につながっていると思います。当時、その試合をどのように見ていましたか?
日本にとってすごくいい試合でしたよね。当時のヘッドコーチを務めたエディーさんの指導とともに、そのやり方がとてもよかったと思います。その時には、ハルミチさん(現在フォーリーさんと同じクボタに所属する立川理道選手)をはじめとする日本代表のチームは、その試合に向けてすごくいい準備をしていて、ただ単に幸運だったわけじゃない。しっかりとした準備があったし、運もあった。それら全部が合わさって、実を結んだと言えるでしょう。
しかも、その時のゲームだけに終わらないで、その流れを日本がずっと持ち続けて、2019年の大会でもアイルランドやスコットランドを破るという結果につながりました。今大会で日本代表がどれだけの結果を残せるのか、すごく楽しみです。
――近年のラグビーでは、キッカーのレベルが上がってきています。キックの得点が試合の行方を左右するといっても過言ではありません。そんな潮流の中で日本代表のチームがやらないといけないことは何でしょうか?
おっしゃるとおり、キッキングというのは、ゲームの中での重要性が高くなってきています。なぜキッキングが大事なのかといえば、例えば相手にプレッシャーをかけること、相手のディフェンスを抑えること、スピードを生み出すことなどに対して、大きな影響を与えるからなのです。
日本には技術力のあるキッカーが、たくさん生まれてきています。しかし、大切なのは優秀な人が1人もしくは2人いるのではなく、例えば、バックというポジションの全員を、キックが上手な人たちで揃える……といったことが求められるでしょう。
とはいえ現在の日本代表は、すごくよくやっていると思います。優れたトレーニングなどにも、たくさん取り組んでいますよね。日本人ラグビー選手の中にはドリブルの質が高い人もいますし、見込まれるものはたくさんあると思っています。日本代表のコーチではトニー・ブラウンさんの存在が大きく、ディフェンスに対して仕掛けたり、ゲームの中にキッキングを上手に取り込んだりすることに、すごく優れています。そういった指導が日本代表の力となり、今大会でチームがひとつになれるかどうかですね。
日本代表はアルゼンチンやイングランドと一緒の「プールD」に入っていますけど、もう誰も見下してはいないでしょう。これまでに準備してきたことを万全な体制にして臨んでいるはずなので、非常に楽しみな大会ではないかと思いますね。
取材・文/田尻 健二郎
撮影/Miho Watanabe、編集部
取材協力/オーストラリア⼤使館