キャンプ用品を扱うスノーピークの業績が曲がり角に差し掛かっています。
2023年12月期上半期の売上高が131億4,000万円となり、前年同期間と比較して16.3%の減収となったのです。
スノーピークはコロナ禍のキャンプブームに乗り、2021年12月期の売上高が1.5倍に跳ね上がった会社。
上場した2014年以降、増収を重ねてきましたが、2023年12月期は減収を予想しています。キャンプブーム終焉の足音も聞こえてきました。
当初の予想よりも売上高を2割引き下げ
スノーピークはもともと、2023年12月期の売上高を前期比17.0%増の360億円と予想していました。しかし、8月10日に通期業績予想の下方修正を発表。売上高を従来予想よりも22.6%も低い278億5,000万円に引き下げました。
※決算短信より
スノーピークは下方修正した理由について、「当社を含めたアウトドア業界全体で、今年の実需の状況を見誤ったことが、今回修正の大きな要因となっております」と説明しています。同社はアウトドアブームが引き続き勢いを持っていると予想して仕入を行なっていました。しかし、上半期の段階で予想を上回って在庫が積みあがっているなど、問題が顕在化。修正を迫られました。
アウトドア市場がかつての勢いを失っているのです。
日本で「ザ・ノース・フェイス」の商標権を持ち、アウトドアグッズやウェアなどを販売しているゴールドウインの2023年3月期第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の売上高は、前年同期間比9.7%の増収でした。増収にはなっているものの、2022年の同期間の売上高の伸びは23.5%で、勢いを失っています。
ゴールドウインは、アウトドア関連のギアの一部が反動減に見舞われたと説明しています。その代わり、登山需要の回復や高機能素材を取り入れたウェアの販売が好調で、悪影響を押しとどめました。
やはり、手軽なアウトドアである、キャンプグッズの人気は一巡しています。
ライトユーザーが急拡大して市場を押し上げた
日本オートキャンプ協会によると、2022年のキャンプ用品の市場規模は前年比5%減の948億円でした。市場規模が減少に転じるのは2008年以来、14年ぶりです。
キャンプブームに変化が生じている様子は、中古品を取り扱うブックオフグループホールディングスの数字にも表れています。
2022年5月期のスポーツ・アウトドア用品の仕入高は前期比23.8%の増加。更に2023年5月期も同17.1%増加しています。2期連続で2割も増加しているのです。
コロナ禍のキャンプブームでギアを買いそろえたものの、キャンプ場に足を運ぶ機会も減って売りに出す様子が見て取れます。
ただし、キャンプブームが完全に終焉を迎えたのかというと、そうとも言い切れません。
キャンプ用品メディアCAMPxGEARが興味深い調査を行っています。コロナ前とコロナ後でキャンプに行く回数を調べたもの。コロナ前は、年0~1回のライトユーザーの割合は42.6%でしたが、コロナ後は51.2%まで拡大しています。年0回のノンユーザーは31.3%から4.6%まで急減しました。
同時に購買に関する調査も行っています。新セットを購入した割合は、コロナ禍が33.3%、コロナ後は7.6%でした。そして買い替えが14.3%から25.8%に拡大しています。
この結果を見ると、キャンプの初心者とも言うべきライトユーザーの需要がコロナ禍でいっきに拡大。そこからミドルユーザーに移行して買い替えや買い増しを行なうか、キャンプ場に足を運ばなくなって手持ちのギアを手放しているという姿が浮かび上がります。
つまり、キャンプブームそのものが終焉したというよりも、初心者向けのギアの市場が縮小、変化しているということなのです。
キャンプ上級者向けのギアの開発が必要に
スノーピークはキャンプ初心者向けのブランドとして定着しています。価格は高めに設定されているものの、ユーザー目線を追求してコストパフォーマンスに優れたメーカーという認知を獲得しました。
商品点数も多く、同じブランドで揃える楽しさも兼ね備えています。それが男性のコレクション志向を刺激し、購買に結びついていました。
一通りギアを揃えてキャンプ場に足を運ぶ頻度が高まると、キャンパーは初心者を抜けてもう一段階上のブランドを買い求めるようになります。ソロや少人数でキャンプを楽しむ人は、スウェーデンのヒルバーグのような堅牢なテントを購入します。大人数用のテントであれば、デンマークのノルディスクが人気です。
伸び悩みが鮮明になったスノーピークは、キャンプ上級者向けのギアの開発へと本腰を入れる段階に入ったように見えます。ヒルバーグは厳しい強度試験や防水性評価試験などを経て、合格したものだけを商品化しています。
スノーピークは業績拡大の一手として、アパレル分野の開拓を挙げました。この分野は2022年12月期の売上高が33億2,000万円となり、前年度比28.2%拡大しています。新事業としてはすでに芽が出ており、次なる事業を育成しなければなりません。
スノーピークは、上級者・プロ向けのブランドを立ち上げ、育てることが求められているように見えます。
取材・文/不破 聡