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2022年のアニメ制作業界市場規模は前年比4.9%増の2597億9000万円で回復傾向

2023.09.12

『ONE PIECE FILM RED』や『すずめの戸締まり』、日本国内のほか中国で記録的なヒットとなった『スラムダンク』など、多くの大型タイトルが登場して明るい話題が多かった2022年のアニメ業界。

帝国データバンクから、そんな2022年のアニメ制作産業の動向と今後の見通しに関する調査・分析リポートが発表されたので、内容を一部抜粋してお伝えする。

画像はイメージです

アニメ制作市場、3年ぶりに回復 22年は2597億円、制作本数回復が寄与

2022年(1~12月期決算)におけるアニメ制作業界の市場規模(事業者売上高ベース)は、前年(2475億4400万円)を4.9%上回る2597億9000万円となった。2年連続で減少が続いた21年から一転して、3年ぶりに市場が回復した。

アニメ制作市場は2011年以降、制作元請を中心に制作本数の増加や配信料などライセンス収入の増加に支えられ、19年まで9年連続で拡大していたが、20-21年はコロナ禍による制作・公開スケジュールの遅延などで納品が翌期へずれ込むといった影響を受け、前年比で減少が続いた。

22年も引き続き制作本数はコロナ前に比べて減少したケースが多かったものの、23年以降に公開される大型の劇場版映画やアニメ作品などの制作案件が増加したことで、制作市場全体でも持ち直しの動きが広がった。

足元では、テレビ向けのほか、動画配信(VOD)プラットフォーマー向けのオリジナルアニメ制作といった案件や、ネット配信・視聴市場の拡大によるIP(知的財産)収入が中堅の元請制作会社にも徐々に広がっている。

現状の業績ペースで推移した場合、2023年のアニメ制作市場は22年比で10%を超える増加が予想され、制作本数に応じた収入が主体だったコロナ前の水準(2019年:2820億円)を上回る可能性がある。

2022年の制作企業1社当たり平均売上高は5億7700万円だった。2020年から減少が続いた収入高は一転して増加に転じ、コロナ前水準に迫った。業績動向では、全体で「増収」が44%、「減収」が21%と、増収が減収を大きく上回った。また、増収となった割合は過去5年間で最も大きかったほか、減収となった割合は過去20年で最小だった。

損益面では、「増益」となった企業が47%を占めた一方、「赤字」も31%を占め、収益力の2極化が進んだ。赤字の割合は前年から低下しており、制作本数が減少したことによる内製での受注消化で、フリーランスなど外注費が減少したことが寄与した。ただ、若手アニメーターの確保難など人手不足は依然として改善のメドが立っていないケースが多く、23年以降は赤字割合の再拡大が懸念される。

元請・グロス請:元請間の「収益力」格差が鮮明に 増益・赤字の二極化進む

制作態様別に平均売上高をみると、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」では、2022年の平均売上高は12億4700万円で、前年(11億6300万円)を約8400万円上回って3年ぶりの増加に転じた。業績動向では、「増収」が過去10年で2番目に大きい54%、「減収」は21年から15pt低下した25%だった。
損益面では、「増益」(49%)が過去20年で2番目に大きかった一方で「赤字」が34%を占めるなど、元請間における収益力の二極化が進行している。

ポストコロナのなかでテレビアニメ本数の受注量が回復途上にあるなか、特にVODサービスを経由した過去作品のオンデマンド・ストリーミング配信、リバイバル、キャラクター等の二次利用による版権収入などIP事業の有無が元請間の収益力を左右する傾向が強まった。

人件費や外注費などコスト増で制作事業部門の収益は低調だったものの、IP事業による収入が寄与し、大幅な黒字化や増益を達成したケースが多くみられた。また、これまで大手元請制作が中心だったIP事業の収入は、VOD運営大手との取引を背景に版権保有の機会が広がる中堅元請でもみられた。

他方、自社版権を多く持たない小規模・新興の元請では、アニメーター不足等の影響を背景に受注量を拡大できないケースや、自社での消化能力を超えたことで外注費がかさみ、請負金額を制作コストが超える採算割れが発生したケースもあり、減益や赤字が多く発生した。自社IPの有無や制作能力の多寡によって、元請間の収益バランスに格差が生じている。

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