適格請求書等保存方式(インボイス制度)への対応準備を進めるなかで、必ず知っておかなければいけないのが、適格請求書発行事業者の登録方法だ。
登録が必要だと考えている方も、どのように登録を進めるのか、いつまでに登録すれば良いかが把握できていないケースは少なくないだろう。
そこで本記事では、そもそも適格請求書発行事業者になるとどんな変化が発生するのか、登録するために行うべきことを解説する。適格請求書発行事業者について理解を深め、必要に応じて登録を行ってほしい。
適格請求書発行事業者とは
適格請求書発行事業者とは、その名の通り適格請求書を発行する権利を有する事業者のこと。適格請求書発行事業者の登録を行うには、税務署に登録申請書を提出し、審査を受ける必要がある。登録申請書は、国税庁のホームページからダウンロードが可能だ。
登録の際の注意点としては、免税事業者は適格請求書発行事業者として登録できないことが挙げられる。本来、売上高が1,000万円以下の事業者は免税事業者として認められ、消費税の納税義務が免除されるが、適格請求書発行事業者になる場合には、課税事業者に変更したうえで登録する必要がある点を覚えておこう。
適格請求書発行事業者の登録が必要なケース
適格請求書発行事業者の登録は任意であるため、自身が登録を行う必要があるかどうかは各自で判断する必要がある。以下のような点に着目しながら、自身が適格請求書発行事業者に登録すべきか判断しよう。
取引先の不利益につながるか
売り手が適格請求書発行事業者に登録しない場合、買い手である取引先が納税面で不利益を被ってしまう可能性がある。インボイス制度導入以降、買い手は適格請求書を発行されていない場合は仕入税額控除を利用することができない。
本来、仕入税額控除によって控除されるはずの税金が控除できなくなってしまうため、納税額が増加することになってしまう。取引先が免税事業者もしくは簡易課税制度を利用している場合には、適格請求書を発行せずとも仕入税額控除が適用できるため、取引先がこれらに該当するかチェックしておくのがよいだろう。
取引内容に影響があるか
取引先の不利益が生じてしまう場合、取引内容に影響が生じる可能性もある。仕入税額控除が利用できない分、取引額を下げることで帳尻を合わせようという意図から、値下げの相談をされることもあり得る。
買い手側としては納税面で不利益を被らないよう、適格請求書発行事業者との取引を優先するという選択をする可能性もあるため、取引が終了したり、新規の仕事が受けづらくなることも考えられる。
取引内容に大きく影響する場合には、適格請求書発行事業者への登録を検討した方がメリットが大きいといえそうだ。
適格請求書発行事業者の登録申請
次に、適格請求書発行事業者に登録する際の手順や登録申請書の書き方を紹介する。いくつかの段階を経ての登録となるため、登録を予定している場合は準備を早めに行うようにしよう。
登録申請書を作成する
適格請求書発行事業者の登録をするには、まず登録申請書の作成を行う必要がある。登録申請書に記載する主な内容は以下の通りだ。
・住所、事務所の所在地等
・納税地
・氏名、名称
・代表者氏名
・法人番号
・事業者区分
・マイナンバー(個人事業主の場合)
登録申請書を税務署に提出する
登録申請書の記載が終わったら、次に登録申請書を税務署に提出する。提出方法は以下の通りだ。
・税務署に直接提出する
・インボイス登録センターに郵送する
・e-Taxで申請する
インボイス制度が開始されるのは2023年10月1日。開始時点から適格請求書発行事業者として登録したい場合には、2023年9月30日までに登録申請を行う必要がある。登録完了まで一定の期間を要するため、提出が期限近くになる場合は早めの申請を心がけよう。
税務署による調査の後に登録番号を受け取る
登録申請書の提出が完了すると、税務署による調査が行われる。認められれば登録および公表が行われたのち、登録番号の記載された通知書が送付される。取引先に対しても、適格請求書発行事業者登録完了の旨を伝えておこう。
適格請求書発行事業者が課せられる義務
ここでは、適格請求書発行事業者が課せられる義務について見ていこう。登録後の対応を間違わないためにも、事前にしっかり確認を行いたい。
適格請求書の発行および保管
適格請求書発行事業者は、適格請求書の発行に加え、適格請求書の写しを保管をすることも義務付けられている。保管期間は適格請求書を交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月経過した日から7年間となっている。
【保管期間の例】
適格請求書の交付:2024年8月1日
課税期間の末日:2024年12月31日
課税期間の末日の翌日:2025年1月1日
2か月後:2025年3月1日
保存期日:2032年3月1日
消費税の納税
適格請求書発行事業者は必ず課税事業者となる必要があるため、それに付随して納税の義務が発生する。本来免税事業者で納税が免除される事業者の場合も義務が生じるため、適格請求書発行事業者として登録すべきか判断する際に特に注意すべき項目といえるだろう。
※データは2023年9月上旬時点のもの。
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文/編集部