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WOTAが世界に先駆けて「小規模分散型水循環システム」の社会実装を開始、水道管の老朽化問題を解消できるか?

2023.09.05

2040年までに持続可能な水インフラの確立を目指す「Water 2040」

「Water 2040」プロジェクトは、WOTAが自治体、ソフトバンク、日本政策投資銀行の協力を得て進めていく。2023年までに給水原価が高く水問題が顕在化した地域から先行的に導入を開始し、2030年までに財政赤字で老朽化配管が更新しづらい地域の代替手段として全国に広げていくことを目指し、2040年までに人口密度の低い地域の標準的な水インフラとなり、次世代が安心して使える持続可能な水インフラの確立を目指す。

島嶼地域へ普及できる「島嶼地域モデル」の確立を目標に、実証実験を開始している自治体が東京都 利島(としま)村。東京から南に約140kmに位置し、人口約300人、面積は約4.04㎢と、日本で4番目に小さい自治体。島の北部のみに港と集落があり、それ以外の土地はほぼ椿の木々に覆われた自然豊かな島だ。

昨年の10月にソフトバンク、WOTA、利島村で、水供給システムの構築に向けたオフグリッド型住環境の検証に係る合意を締結。水は水循環システム、電気は太陽光発電を搭載したオフグリッド型居住モジュールを今年3月に設置、6月から安定性、運用性、コストなどを検証する実証実験を開始している。

「本村には川がなく昔は雨水のみを活用するなど水に大変苦労してきた。安定した水の確保が困難で水飢饉を経験し、他の島から水をもらう“水みまい”もあったと聞いている。また、雨水を効率よく収水するための先人の知恵である、木に笹の枝をくくりつけた“シデ収水”は今でも神社などで見ることができる。

近年、浄水場の整備が行われたが、旧勾配で平地が少ない島のため、貯水池は2カ所のみで、満タンの時でも約2ヶ月も持たない貯水量であることから、海水を汲み上げて淡水化し増水する仕組みを併用しており、この海水淡水化装置により水の供給は大幅に改善された。

しかし、この淡水化装置は非常に高額なランニングコスト、メンテナンス費用がかかることが本村の課題となっている。本村の水道料金が200円に/㎥対し、給水コストは2800円/㎥と14倍もの費用がかかっており、海水淡水化装置を使うほど大幅な赤字となり、水道財政を圧迫しているのが現状。

水の課題のほかに、本村には住宅不足という課題もあり、移住者の増加と核化促化が進む中で村内の住宅が不足しており、各事業者で人材不足に直面している。平地が少なく新規に住宅を建設するための土地の確保が難しく、インフラなどの課題により2年から3年を要する。そこで昨年度より1世帯でも多くの方が豊島村に移住できる環境整備を考え、トレーラーハウスも視野に入れ、住宅不足の課題解決に向けた取り組みも開始。こうした事情から水循環システム、太陽光発電を搭載したオフグリッド型居住モジュールの実証実験を開始することになった」(利島村 村長 村山将人氏)

オフグリッド型居住モジュールには、居住スペースと水循環システムや太陽光発電の蓄電池などを設置しているインフラスペースがあり、日常生活に必要な家具と水循環システムを利用した、キッチン、洗濯機、シャワー、トイレを完備している。

実証実験では、水循環システムは日常生活に水を利用し、水の安定供給が実現可能か検証を行っているが、東京都の一般的な家庭の水使用割合と比較して同じような割合で水が使用されており、屋根からの雨水と循環再生のみで、日常的な生活が可能な水量を維持している。

電力についても、使用電力量の89%を太陽光発電にて供給できており、一人のオフグリッド生活を賄うためには十分なシステムになると期待される。

「実証実験に協力している居住者からは前向きな声をいただき、本村の住民にも非常に強い関心を持っていただいている。本事業について実施したアンケートでは、水循環システムに興味がある方は85%、自宅に導入してみたいという方は75%にも上った。

今後は、実証実験の結果を反映した水循環システムを東京都に支援をいただきながら、2025度までに建設予定の公共施設で実装し、将来的には本村の水インフラの最適化を図れるよう取り組んでいきたい」(村山村長)

2060年までの人口減少率が40%超という推計があり、ほぼ全域に過疎地域を抱える愛媛県も実証実験に参加。瀬戸内海気候のため降雨が比較的少なく、急峻な地形から降った雨がすぐに海へ流れ出てしまうなど、水資源に乏しいという特徴があり、水資源対策は県政の重要課題となっている。

水道事業を取り巻く経営環境も、急速な人口減少や施設・管路の老朽化等により厳しさを増しており、「小規模分散型水循環システム」は地域が抱える水インフラの課題解決策のひとつとして期待され、2023年度から愛媛県の取り組みとして、今治市、伊予市、西予市の3市と連携し実証実験を開始する。

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