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WOTAが世界に先駆けて「小規模分散型水循環システム」の社会実装を開始、水道管の老朽化問題を解消できるか?

2023.09.05

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

日本の上下水道財政問題の解決となるか?WOTAの「小規模分散型水循環システム」

テック系ベンチャー「WOTA」 は、持続可能な水インフラの構築に向けて、複数の自治体と共に小規模分散型水循環システムを実装し、人口減少や上下水道の老朽化により上下水道財政が大幅に悪化していく2040年までに解決を目指す「Water 2040」プロジェクトを始動した。

WOTA CEOの前田瑶介氏は、中学生で水問題に関心を持ったことをきっかけに、高校時代に水処理の研究を実施。東京大学在学時には都市インフラや途上国スラムの生活環境の研究、同大学院では住宅設備(給排水衛生設備)を研究。2014年に水問題の構造的な解決に取り組むWOTAを設立した。

WOTAが最初に取り組んだのは災害時の広域断水の解決。2019年の長野市の豪雨災害では、最初の製品として発売したばかりの「WOTA BOX」を、長野市のすべての避難所で使用し、何日も入浴できないような状況に追いやられている被災者に水を届ける活動を実施した。

「WOTA BOX」は排水の98%以上を再生して 循環利用を可能にすることで水道のない場所での水利用ができるポータブル水再生プラントで、オプションユニットと接続すれば、シャワーや手洗いにも可能になる。現在までに約2万人以上の被災者に災害現場で利用した実績がある。

「この数年で様々な自治体から、災害だけではなく日常の給水、過疎地域の上下水道の問題の解決に一緒に取り組んでくれないかとお声がけをいただくようになり、弊社が9年間やってきた最大の成果だと思い、次のステップとして日常的な給水の問題に着手することになった。

日本のみならず世界では水不足の状況にあり、非常に多くの方々が水不足に直面している。

全世界の人口に対して40%ほどの水が足りないという現状があり、国内の問題解決に取り組みながら、世界の水問題解決にも日本発で貢献していきたいと思っている」(前田CEO)

日本の水道事業は、高度成長時代に人口増加を見込んだ水源の確保や施設の拡張整備が進められてきた。その結果、2021年度には水道普及率は98.1%に達している。一方で、給水人口は少子化に伴い2010年をピークに減少し続けている。それに加え、水道施設は徐々に更新時期を迎えており、老朽化した管路の更新投資などに多額の費用が必要となっている。下水道財政赤字は2030年に8.3兆円になると見込まれ、財政赤字構造は増々拡大していくことが想定される。

そのため水道事業の運営にあたっては、「給水人口・給水量の減少に伴う収入の減少」と「更新投資需要の増加」のバランスを見極める必要が生じているが、すでに料金収入で給水・下水処理費用を賄えず、国庫からの補助や一般会計からの補填等で費用を賄う自治体も存在している。

このような状況を受けて、水道料金の値上げや、官民連携・水道事業者同士の広域連携といった動きも出ている一方で、人口規模の少ない地域ほど、水道財政収支のバランスが難しくなっている。

「大規模な処理場とパイプラインのネットワークで都市全体をつないで、給水あるいは排水処理をする仕組みが今の上下水道の基本的な形だが、なかなか整備できない、維持できない地域が日本だけでなく世界中で広がっている。

そのための解決となるアイデアが、建物単位で、使った水をその場で再生・循環する『小規模分散型水循環システム』。WOTAは独自開発した水処理の自律制御技術により、使った水をその場で処理し、また使える水に戻す再生循環の仕組みを構築しており、水インフラを分散化すれば、パイプラインネットワークや水自体が無くても持続可能に水を使っていくことが可能になる。

人口密度の少ない地域などでは従来型の上下水道施設ではコストが見合わず、便益を得られない地域がある。問題となるのが配管コスト。浄水場から遠く配管が長いにもかかわらず、その配管費用を負担する人口が少ない地域においては、収支アンバランスが発生し、水道財政を圧迫してしまう。

長距離配管を使わない分散化の方法としては、小規模給水施設を作る、各家庭に井戸などの各戸型給水装置を作る、給水車で送水するなどの方法もあるが、これらは老朽化した配管更新と比べ初期費用の安さや導入の速さなどのメリットがある一方、維持運営費が高いため長期的にみると給水原価が上がる可能性がある。

こうした地域に代替手段としてWOTA の『小規模分散型水循環システム』を導入できれば、自治体も従来型施設の維持、更新、運用に関わるコストを減らすことが可能になる。

私たちが取り組んでいる自治体の例では、山の中にある40世帯に対して10kmの配管が必要となり、約10億円の建設費用、1世帯あたりにすると2500万円かかることになってしまう。小規模分散型水循環システムなら1世帯あたり数百万円のオーダーに抑えることができる。

『小規模分散型水循環システム』は、過疎地域の上下水道の赤字構造を改善できる新たなソリューションになり得ると考えている」(前田CEO)

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