花形職業だった車内販売のパーサー
実は私は、東海道新幹線の車内ワゴン販売のパーサーの接客術に「素晴らしい」と思ったことが一度もないのである。色々と購入時のエピソードを思い出してみるのだが、本当に何も思い出せない。その代わり、「これは酷い」と思うことだらけだ。
いちばんに思うのは、乗客の「買おうか、買うまいか」という比較的ゆっくりした思考回路の上をゆく、ワゴンの走行スピードだ。あまりにも静かに通過していくことだ。「どうしよう、何を買おうか」と思っている間にワゴンは声をかけるのを躊躇するほど遠くに行ってしまっていることが多い。
パーサー本人が大きな声で呼び込みをするのは、どうやら不評のようだが、もう少し通過することを事前に通知してくれてもよいのではないか。
以前、前述の『ドデスカ!』で、出演者が学生時代、どんなアルバイトをしていたかという話になったとき、ある女性アナウンサーが「新幹線の車内ワゴン販売」を挙げ、一同、「へ~~~」と驚いた。「同級生の中でもCAを目指している人たちがよくやっていた印象があります」との説明もあり、もう一度「へ~~~」となった。
そのような“研修”の要素があるのならば、彼女たちはもう少し愛想をよくしてもいいのではないか。
もちろん、“カスハラ”や“セクハラ”を受けることもあっただろう。コロナ禍を経て、だいぶ減ったが、座席を回して酒盛りをしているオジサン客がパーサーの女性に「君、かわいいね」「いくつなの?」などと声をかけ、彼女たちが困惑しているのを目撃したのは一度や二度ではない。
まだコロナ禍だったのに、外国人客に言われるままにワゴン内の多くの商品を手で触らせていたパーサーも居たのはどうかと思った。
当然、私の“買う気”は失せてしまった。
飛行機内では、こうしたマナー違反をする乗客に厳しく対処できるマニュアルがあるようだが、新幹線の場合は車掌が飛んできて対応するような光景は見られない。
それでも、“CAを目指す女性の人気バイト”“花形職業”としてもっともっとアピールしていれば、もう少し“なり手”は増えたのではないかとも思う。
そういえば車内販売のパーサーにスポットをあてた『新幹線ガール』(2007年7月期・日本テレビ系)というドラマがあった。同作に主演したベッキーは、8月13日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「私はドラマに出たので…」と“花形”部分に言及していた。
同日、「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳は、私と同じくワゴンの通過スピードの速さを指摘。「シソンヌ」の長谷川忍は、「ラインナップが好みじゃない」と言い、「ちくわ」を名指しし、「オジサンの好きなものしか載っていない」と言っていた。東海道新幹線はタレント乗車率が高いことでも知られているが、車内ワゴン販売終了のニュースに対する意見は“人それぞれ”だった。ちなみに私は「ちくわ」も買ったことがある。ウイスキーのつまみランキングとしては、けっこう上位だと思う。