個人の発信を真っ先に手掛けた那須大亮が先駆者としてアドバイス
そういった個々の発信の重要性に目を向け、大々的にアクションを起こしたサッカー選手の先駆け的存在なのが、今やユーチューバーとして名を馳せる那須大亮だろう。
8月16日に自身のユーチューブチャンネルで1週間限定の現役復帰を発表した那須大亮
高校サッカーの名門・鹿児島実業高校時代には同期の松井大輔(YSCC横浜)、2つ上の遠藤保仁(磐田)らとプレーした彼は、駒沢大学3年だった2002年に横浜F・マリノスに入団。岡田武史監督(現日本サッカー協会副会長)にDFとして重用され、2004年にはJ1制覇の原動力となった。
同年には2004年アテネ五輪にキャプテンとして出場。チームは1次リーグの憂き目に遭い、彼自身も悔しい思いをしたが、この経験が世界に目を向けるきっかけになったという。
その後、東京ヴェルディ、ジュビロ磐田、柏レイソル、浦和レッズ、ヴィッセル神戸という数々の伝統クラブでプレー。2019年シーズン限りでJリーガーとしてのキャリアに区切りをつけている。
しかしながら、彼が「那須大亮ユーチューブチャンネル」を開設したのは現役選手だった2018年。当時は「Jリーガーが自らユーチューブ配信をするのはいかがなものか」といった賛否両論も渦巻いたが、本人は批判覚悟で誰もやっていないことをやろうと突き進んだ。
「拡散力が高く、若年層の視聴者が多いこのプラットフォームをどう生かすか。それ次第でサッカー界をいい方向に持っていけると思ったのが最初です。ネガティブな見られ方をしているところに逆に大きな可能性を感じて、チャレンジしてみようと決めましたね」と本人は言う。
一度決めたら凄まじい行動力の持ち主である那須は、神戸の同僚だったアンドレス・イニエスタ(エミレーツ・クラブ=UAE)やルーカス・ポドルスキといった世界的名手たちに次々と登場を打診。快諾してもらい、配信したところ、登録者が急増。「2019年の引退時点で登録者10万人超え」という目標を達成。その後はスムーズにユーチューバー活動へシフトした。
2020年以降は代表の現役・OBとの退団や各クラブの裏側レポート、高校・大学訪問、海外クラブでの練習参加など幅広いチャレンジを続け、現在に至っては登録者数が45万人を突破。元サッカー選手のユーチューブでは、本田圭佑や長友佑都(FC東京)らをしのいでダントツのトップに立っている。
「僕のユーチューブ活動は以前から採算度外視でやっていたところがあります。投稿は平均週2回、多い時に週4回行うんですが、その間にもオンラインミーティングやサッカー指導・イベントが4~5件入ることもある。そういう超多忙な時期が続くことも結構あって、ここ数年はメチャメチャしんどかったですね。
キャスティングのためのテレアポも多くて、頭がパニック状態に陥りそうになったこともありました(苦笑)。ほとんどが僕の人脈や信頼関係でやってもらえているので、地道な連絡や説明を欠いてはいけないと思う分、時間を取られてしまう。そのうえで撮影に行って編集もやるわけですから、一筋縄ではいかないなと感じました」と登録者数が40万人を超えた昨年、那須は大変さを吐露していたことがある。
そこまでストイックに完成度の高いコンテンツ作りに邁進していた男が、2023年に入ってからは「いろんなことを発信していくうえで、やっぱり言葉だけでは無責任。引退したとはいえ、自分はアスリート。だからこそ、より現場のパフォーマンスにこだわるべき」という思いが強まっていった模様だ。
いわてでの那須は闘争心を前面に押し出した(写真提供=いわてグルージャ盛岡)