折りたたみ、ミッドハイクラスにコスパ優秀スマートフォンを展開するモトローラ
房野氏:新製品といえば、モトローラも折りたたみスマートフォンの「motorola razr 40 ultra」と、ミッドハイクラスの「motorola edge 40」を発表していますね。
石野氏:モトローラは頑張っていますよね。折りたたみも比較的安い、というかIIJ割引があります。
石川氏:MNPで買い替えれば4万円くらい値引きされる。IIJは、OCN モバイル ONEが新規受付を終了したことで、鼻息を荒くしているみたいです。MVNO業界的には、ドコモの料金プランとして「irumo」が出てきたことで、ユーザーの流動性が高まると感じているようです。市場が活性化する可能性はありますよね。
石野氏:ただ、「ahamo」と違って、irumoが各MVNOよりも圧倒的に優れているポイントがあまりないんですよね。同じ土俵に立っているので、OCNから移るユーザーが必ずしもirumoを選ぶ必要がない。OCNの契約者数は約200万なので、その層をIIJやmineoがアクセルを踏んで取りに来ています。
とはいえ、モトローラ自身も、折りたたみスマートフォンがそこまで売れるとは思っていない。あくまで見せ球というか、ブランディングとして投入しています。どちらかというと、motorola edge 40のほうが、おサイフケータイも搭載して、デザインにも日本ユーザーの意見を取り込んでいる。あれはインパクトありますよ。
房野氏:手に持ってみると、作りがいいなと思いますよね。
石野氏:モトローラは日本法人もありますしね(笑) あれだけやっていても、モトローラのシェアはそこまで大きくないわけですから。
石川氏:やっぱり、日本人は保守的なので、なかなかスマートフォンのメーカーを変えないユーザーが多いみたいです。なので、オープン市場で戦っているメーカーがそこをひっくり返すのは大変なことなんだろうなと思いますね。価格だけじゃなくて、信頼感が大事。
法林氏:ユーザーとしてもボーダーラインがあるよね。信頼できるメーカーなら移ってもいいという心情があるけど、そこに取り入るのが大変です。モトローラは、今回のmotorola edge 40と、前に発売しているmoto g52j、moto g53jで、おサイフケータイ対応端末を並べたけど、どこまでシェアを獲得できるかは未知数だね。ただ、取り組み方は悪くない。折りたたみは、ヒンジ周りなどの造りを見た感じ、「Galaxy Z Flip4」にそっくりだったよね。
石野氏:〝サムスン感〟が強かったですね。サブディスプレイが大きいGalaxy Z Flipシリーズの最新モデルが出るので、その前に発表する必要があったんでしょうね。
石川氏:、モトローラとしては、ワイモバイルで取り扱われましたけど、もう少しキャリア採用端末が増えないと厳しいかなと思います。キャリアも京セラやFCNTが撤退したことで、スマートフォンのラインアップは増やしたいはずなのに、そこに食い込めない理由はなんなんだろうなと。
法林氏:歴史的な経緯を考えると、最初に取り扱うべきはauなんだけど、最近のauは端末の調達を渋っています。
石川氏:かなり渋いですよね。
法林氏:そう。だからIIJをパートナーに選んだのは悪くない考えだと思います。端末の性能はいいし、安心して選べるメーカー。ではどうやって、ユーザーにアピールしていくのかが今後の課題ですね。
房野氏:私自身が最近、モトローラのスマートフォンに触れていないので、あくまで過去のイメージなんですけど、カメラ性能がやや弱い印象があるんですよね。
法林氏:最近のスマートフォンは、自社で画像処理のソフトウエアを開発しているメーカーもあるけど、標準で提供されるソフトウエアがかなり良くなっています。モトローラも、ポートレートや暗いところの撮影も普通にこなせるので、あまり不満は出ないと思いますよ。カメラマンが評価するようなレベルになると、いろいろ突っ込まれるとは思うけどね。
石川氏:一般のユーザーが写真を撮って、SNSにアップする程度であれば、大きな問題はないはず。
石野氏:ただ、カメラ技術に際立った特徴はないというか、頑張っているイメージは確かにないですね。
石川氏:どちらかというと、モトローラは「ピュアAndroid」を搭載していて、あまり色を付けない方向性にこだわっています。
石野氏:その分、折りたたみスマートフォンもしっかりとラインアップしていますしね。ただ、今回は持ってこなかったけど、グローバルにはmotorola razr 40という、〝Ultra〟が付いていなくて少し安いモデルもあるんですよ。個人的にはそちらを日本へ導入してほしかったです。
石川氏:準備してそうな雰囲気はあったよ。
法林氏:含みを持たせた言い方はしていたよね。もしかすると、年末商戦あたりで出してくるかも。
石川氏:10万円切るくらいの価格設定ならインパクトありますね。それでいうと、今回はどうしてもタイミングが悪いなと思ってしまいます。3キャリアからGoogle Pixel Foldが出て、Galaxyの最新折りたたみ機種も出た。なかなかモトローラの折りたたみを採用する余裕がないんだろうなと。
石野氏:折りたたみばっかりラインアップしてもしょうがないですからね。
房野氏:あまり数は売れないですからね。
法林氏:最近は20万円クラスの端末が並んできているけど、なかなか厳しいよね。そう簡単に買い替えようとはならない。
房野氏:そういえば、今日たまたま電車内で、横折りタイプのスマートフォンを使っているところを見ましたよ。
法林氏:最近は結構普通に見ますよ。縦折りタイプは特に、渋谷とか原宿とかで、若い子が使っている。ポーチみたいに斜めにかけて持ち運んでいるよね。
石野氏:首からケータイをさげるスタイルといえば法林さんですからね。〝1億総法林化計画〟が進行しています(笑)
……続く!
次回は、PayPayほか、決済サービスの今について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦