「成吉思汗」という言葉の読み方をご存知だろうか。成吉思汗は北海道では当たり前に用いられている言葉である。
本記事では成吉思汗の読み方や意味について解説していく。また成吉思汗の由来や日本で広まった理由についてもまとめた。
成吉思汗とは?
成吉思汗の読み方は「ジンギスカン」だ。「ジンギスカン」とはもちろん、羊肉とたまねぎやもやし、ピーマンなどの野菜を鍋で焼いて食べるあの料理を指す。羊肉などとはまったく関係のない漢字が並んでいるので、成吉思汗の読み方は知らないと分からないだろう。
だが、成吉思汗は北海道ではかなり馴染みが深い言葉である。北海道にはジンギスカン屋が多く存在するが、店内やメニューを「成吉思汗」の方にしていることもある。
ジンギスカンを作る際は、専用の鍋が使われるのが一般的だ。北海道の家庭にはジンギスカン鍋がある場合も多い。それぐらい北海道で浸透している料理なのである。また、ジンギスカンは平成16年に北海道遺産の1つとして選ばれている。
参考:ジンギスカン | 各地の北海道遺産 | 次の世代に残したい北海道の宝物 北海道遺産
成吉思汗はモンゴル料理ではない
ジンギスカンは「チンギスハン」に似ているため、モンゴル料理だと勘違いする人は多い。しかしジンギスカンはどちらかと言えば日本料理である。ジンギスカンは日本人が中国の料理(烤羊肉など)を参考に作ったと言われている。
確かにモンゴルでは羊肉を食べることも多い。しかし、モンゴルではジンギスカンのような感じで羊肉を食べることはない。
参考:ジンギスカン/成吉思汗 北海道 | うちの郷土料理:農林水産省
成吉思汗の歴史
昭和になると、軍服を作るために羊の毛が大量に必要になった。そのため、日本では本格的に羊が育てられるようになった。その際、毛だけでなく羊肉の活用方法も様々なものが考え出され、ジンギスカンが誕生した。
もちろん戦時中は、庶民が羊を食べる機会はほとんどなかったと予想される。戦争が終わり、日本が経済的にも発展してきた頃、ようやく一般家庭にもジンギスカンが広まってきた。現在では1年を通じて、ジンギスカンが食べられている。花見やパーティーの際には、家族や友人みんなでジンギスカンを食べる人も多い。
成吉思汗の由来
成吉思汗の由来について解説していく。ただ、成吉思汗の由来については、分かっていないことも多いのが現状である。そこで、現状可能性が高いと思われる説について紹介しよう。
「チンギス・カン」からきた説もあるが信ぴょう性にかける
成吉思汗(ジンギスカン)はモンゴル帝国の初代皇帝の「チンギス・カン」からきたという説がある。チンギス・カンが遠征中、羊肉を兵士に振る舞ったことからきているらしい。
ただ、この説に関しては信ぴょう性のあるソースが見つからなかった。また、そもそもジンギスカンはモンゴル料理ではない。そのため、この説は正しくない可能性がある。
駒井徳三が名付けた説も
もう1つ、日本人の「駒井徳三」が名付けたという説もある。こちらの方が有力だ。駒井徳三は、満洲国国務院初代総務庁長官である。
満州のカオヤンロウという羊料理を日本人向けにアレンジしたものを、駒井徳三が「成吉思汗」と名付けたとのこと。ただ、なぜ「成吉思汗」という名前になったのかは不明である。
平安時代の武将である「源義経」はモンゴルで「チンギス・カン」になったという言い伝えがあり、そこから名付けたという説はあるが、真偽は定かではない。
成吉思汗は普通の焼肉と何が違う?
成吉思汗は普通の焼肉と何が違うのか、疑問に思う方も多いのではないだろうか。そこで、成吉思汗と普通の焼肉の違いについて整理した。
成吉思汗と普通の焼肉の相違点は次の4つである。
- 羊肉を使う
- ジンギスカン鍋を使う
- 成吉思汗専用のたれを使う
- 肉と野菜の両方がメイン
1つ1つの相違点について詳しく解説していく。
羊肉を使う
焼肉は牛肉がメインなことが多い。加えて、豚肉や鶏肉なども一緒に焼くことがある。どの肉を焼かなければいけないという決まりはない。
成吉思汗では羊肉を使う。羊肉以外を使ってしまうと成吉思汗とは呼ばなくなる。
羊肉にあまり馴染みがない人も多いかもしれないが、普通のスーパーにも売っていることがある。他の肉よりもコレステロールが少なかったりL-カルニチンが多かったりと、美味しいだけでなく健康にも良いとして知られている。
なお、羊肉には、ラム・ホゲット・マトンの3種類がある。各種類について詳しく解説していく。
ラム
ラムは生後1年未満で永久門歯がない子羊の肉を指す。母乳を摂取しているラムはミルクラムとも呼ばれる。
羊肉は独特な臭みがあるのが一般的だが、ラム肉はそこまで臭みもなく、かつ柔らかいため人気が高い。また、カロリーが低いうえにタンパク質が豊富なので、筋トレをしている方にも人気がある。
ちなみにラム肉はフランスでは高級食材として扱われる。また、最近では中国でも人気が上がっている。その関係で、ラム肉の価格が高騰している傾向がある。
ホゲット
ホゲットは永久門歯が1から2本の羊(生後12ヶ月以上24ヶ月未満)の肉を指す。ラムの柔らかさとマトンの旨味を併せ持っているのが特徴だ。
ホゲットは国内ではあまり出回っていない。だが、ごく稀に羊肉専門店などでホゲットを出している場合がある。
マトン
マトンは永久門歯が2本より多い羊(24ヶ月以上)の肉を指す。
マトンは肉質や味がしっかりしているのが特徴だ。北海道ではラムよりもマトンの方が人気が高い。だが、ラムに比べると癖が強いので好みは分かれるかもしれない
マトン肉がジンギスカンに使われる場合、肉を焼いてからタレを付ける食べ方よりも、あらかじめタレに漬け込んだ肉を焼く食べ方が主流となっている。
ジンギスカン鍋を使う
成吉思汗ではジンギスカン鍋というものを使うのが一般的だ。ジンギスカン鍋は中央部分が盛り上がった形状をしている。この形状も日本人によって考え出されたものだ。
このジンギスカン鍋には、成吉思汗を美味しく食べる工夫がされている。ジンギスカン鍋は盛り上がった中央で羊肉を焼き、周りで野菜を焼くようになっている。
肉の油が自然と下に落ちるため、脂っこくない肉を楽しむことが可能だ。なおかつ、周辺の野菜に肉の旨味と油が絡むため、野菜までおいしく食べることができる。
成吉思汗専用のたれを使う
焼肉では焼肉のタレを使うこともあるし、塩や味噌を使っても良い。成吉思汗では、ラム肉によく合う専用のたれを使う。
成吉思汗専用のたれはさまざまな食材が入っており、贅沢なものになっている。また、シナモンやカルダモンといったスパイスも絶妙なバランスで調合されている。
成吉思汗専用のたれは普通のスーパーには売ってないことも多い。通販などで買うのがおすすめだ。
肉と野菜の両方がメイン
焼肉では野菜を焼く場合もあるが、あくまでメインは肉である。成吉思汗は羊肉がメインというよりは、肉と野菜の両方がメインだ。
成吉思汗に使われる野菜は特に決められていない。よく使われる野菜は、もやし・かぼちゃ・玉ねぎ・ピーマン・にんじんといったものだ。野菜と肉をバランス良く食べられるのも、成吉思汗が一般家庭に普及した理由の1つと言って良いだろう。