3. 相続土地国庫帰属制度の利用のハードル
相続土地国庫帰属制度を利用するためには、さまざまなハードルを越える必要があります。特に問題になりやすいのは、以下のポイントです。
①建物があるとNG
②地形等によってはNG
③審査手数料・負担金の納付が必要
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3-1. 建物があるとNG
土地上に建物が存在する場合、そのままでは相続土地国庫帰属制度を利用できません。先に建物を解体・撤去する必要があります。
建物の解体・撤去には数百万円程度の費用がかかるため、相続について話し合う段階から解体コストを念頭に置いておきましょう。
3-2. 地形等によってはNG
管理の上で支障となる地形等がある場合も、相続土地国庫帰属制度を利用できません。
(例)
・勾配30度以上、高さ5メートル以上の崖があり、管理が非常に大変な土地
・通常の管理および処分を阻害する樹木が植えられている土地
・除去しなければ通常の管理および処分ができない埋蔵物が埋まっている土地
・公道に通じていない土地
・水路等を通らなければ公道に至ることができない土地
・崖があって公道と著しい高低差がある土地
・主に森林として利用されており、市町村森林整備計画に適合していないため、追加で造林、間伐、保育を実施する必要があるもの
など
特に山間部の入り組んだ土地では、地形等を理由に国庫への帰属が不承認となる可能性があります。相続に関する話し合いの段階から、相続土地国庫帰属制度を利用できるかどうか確認しておきましょう。
3-3. 審査手数料・負担金の納付が必要
相続土地国庫帰属制度の申請時には、土地1筆当たり1万4000円の審査手数料がかかります。
また、相続土地の国庫への帰属が承認された場合には、以下の金額の負担金を納付しなければなりません。
宅地 |
原則として20万円 ※市街化区域・用途地域が指定されている地域内の土地は面積に応じて計算 (例)200㎡:79万3000円 |
田・畑 |
原則として20万円 ※市街化区域・用途地域が指定されている地域、農用地区域、土地改良事業などの施工区域内の農地は面積に応じて計算 (例)1000㎡:112万8000円 |
森林 |
面積に応じて計算 (例)3000㎡:29万9000円 |
その他 |
20万円 |
土地の種類や面積によっては、負担金が高額になることもあるのでご注意ください。
4. 相続土地国庫帰属制度に関する相談先
相続土地国庫帰属制度については、全国の法務局・地方法務局の本局において相談を受け付けています。
土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門に相談すれば、相続土地国庫帰属制度を利用できるかどうか、作成した申請書類や添付書類に漏れがないかなどについてアドバイスを受けられます。
特に相続土地国庫帰属制度の利用可否については、相続に関する話し合いの段階から確認しておくことをおすすめします。
参考:令和5年2月22日から相続土地国庫帰属制度の相談対応を開始します|法務省
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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