2. 扶養控除が廃止されるとどうなる?
具体的な政策案はまだ公表されていませんが、仮に扶養控除が全部廃止された場合、高校生年代以上の子どもを育てる人にとっては増税となります。
扶養控除は、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の親族を扶養している人が受けられる所得控除です。扶養親族が16歳から18歳であれば38万円(住民税は33万円)、19歳から22歳であれば63万円(住民税は45万円)の所得控除を受けられます。
扶養控除の廃止によって、実際に増える税額は、以下の式によって求められます。
増える税額=廃止される控除額×税率
以下の表は、夫が妻(配偶者)と高校生の子どもを扶養する3人家族の場合に、扶養控除の廃止によって減少する可処分所得を試算したものです。
年収 |
所得税 |
住民税 |
年収400万円 |
約1万9000円増加 |
約3万3000円増加 |
年収600万円 |
約3万8000円増加 |
約3万3000円増加 |
年収800万円 |
約7万6000円増加 |
約3万3000円増加 |
年収1000万円 |
約7万6000円増加 |
約3万3000円増加 |
年収1200万円 |
約8万7000円増加 |
約3万3000円増加 |
3. 児童手当の拡充と扶養控除の廃止、両方実現したらどうなる?
児童手当の拡充が実現すれば、0歳から高校生年代までの子どもを育てる世帯が増収となります。
その一方で、扶養控除の廃止が実現すれば、高校生年代以上の子どもを育てる世帯は増税(=可処分所得の減少)となります。
各年代の子どもを育てる世帯において、年間の可処分所得の増減額の目安は以下のとおりです。実際の増減額は所得や控除の状況によって異なる点、および実際の制度変更の有無・内容は未定である点にご留意ください。
<中学生の子どもが1人の場合>
年収 |
児童手当による増収 |
扶養控除の廃止による増税(減収) |
合計 |
年収400万円 |
- |
- |
±0円 |
年収600万円 |
- |
- |
±0円 |
年収800万円 |
- |
- |
±0円 |
年収1000万円 |
6万円 |
- |
+6万円 |
年収1200万円 |
12万円 |
- |
+12万円 |
<高校生の子どもが1人の場合>
年収 |
児童手当による増収 |
扶養控除の廃止による増税(減収) |
合計 |
年収400万円 |
12万円 |
約5万2000円 |
+6万8000円 |
年収600万円 |
12万円 |
約7万1000円 |
+4万9000円 |
年収800万円 |
12万円 |
約10万9000円 |
+1万1000円 |
年収1000万円 |
12万円 |
約10万9000円 |
+1万1000円 |
年収1200万円 |
12万円 |
約12万円 |
±0円 |
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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