やっぱりあるぞ「ホップ・テロワールの存在」
ところで、ホップは香りが強ければいい、華やかならいいというものではない。実際、日本のホップは、それほど香り(アロマ)を主張しないものが多い。香りよりも苦味づけの役割や栽培のしやしさが重視されてきたためだ。
しかし試験栽培場では、ソラチエースのような個性とオリジナリティあふれる品種の開発も行われている。
サッポロビールの原料開発研究所では、ホップのテロワールについても研究している。「テロワール」はワインではよく聞かれる言葉だ。生産地の気候や風土、生産者のキャラクターまで含む特性という幅広い意味合いをもつ。ビールの場合、工場で大量生産されるイメージが強いためか、テロワールという概念が馴染んでいない。
しかし、当然ながら麦もホップも農産物ゆえ生産地ごとの特性はある。サッポロビールはチェコと北海道で栽培・収穫された同一品種のホップにおいて「成分の違い、および試験ビールの風味に違いがあること」を確認。この研究結果は今秋に学会発表される予定だ。
現在、ソラチエースはアメリカで大量に生産されているが、アメリカ産と日本産の違いについて、新井さんは「日本産の方が、ソラチエースらしさがよりシャープに出ている」と評する。違いはたしかにあるのだ。
テロワールについての研究が進めば、チェコ産のザーツと日本産のザーツなど、特徴を使い分けたビールが味わえるようになるかもしれない。ビールの楽しみがさらに深まるだろう。