1989年、ヤマハ「ジョグ(JOG)」は新型に進化。90年代に先鋭化するレーサーレプリカバイクブームに呼応
1983年の登場以来、進化を続けたヤマハ「ジョグ(JOG)」ですが、1989年にフルモデルチェンジを実施して、新型へと進化することになりました。
2ストローク空冷49ccエンジンは、最高出力6.8PS/7000rpm、最大トルク0.71kg-m/6500rpmへと強化され、乾燥重量が60kgと重くなったものの、前後80/90-10扁平チューブレスタイヤの採用などで進化した足周りと相まって、軽快かつ安定した走行性能を発揮します。
また、フルフェイスヘルメットも収まる、大容量のヘルメット・トランクスペースをシート下に確保。ガソリン補給もシートの開閉可能になるなど、90年代へと突入するにふさわしい性能を身にまとうことになりました。
【参考】NEW JOG参考情報
ホンダやスズキもヤマハの動きとリンクするように、2スト50ccスクーターの進化は90年代でさらに激化していくこととなります。レーサーレプリカバイクブームが先鋭化する中、レーサーレプリカスクーターと呼ぶべき高性能なスクーターが、次々と誕生していったのです。
よりパワフルに、より速く……シンプルな目的を達成するため、日本のスクーターは80年代から90年代にかけて、劇的に進化しました。しかし、時代はその後大きく転換。スクーターと言えども、地球環境を無視したモデルは存在できなくなりました。
50ccスクーター用の2ストロークエンジンは、国内主要4メーカーには現在、存在しません。今後は2ストロークエンジン自体が消滅する可能性も否めないですが、シンプルな構造のため軽量でパワフルな2ストロークエンジンは、小排気量のスクーターと相性が良かったことも事実です。簡単な構造ゆえに、分解して整備したり、自分で愛車をいじる楽しみが持てたのも、今となってはありがたいことです。
80年代に50cc2ストロークエンジンを搭載したスクーターを多数製造したヤマハ。その功績は、今も色あせないと思います。
文/中馬幹弘