S Penも小型化、ソフトウエアも進化して使い勝手が向上
S Penによる手書きにも、引き続き対応している。Galaxy Z Fold5に合わせて発売になるS Pen Foldは、より細くなり、ケースに収納しやすくなった。軸が細くなっているため、持ちやすさはやや落ちているような印象もあるが、ケースに装着した時に、大きくなりすぎないのはうれしい。ケースありの状態でもポケットに入れやすくなった。
S Pen Fold Editionは、以前よりコンパクトに
このS Penを収納できるケースも、なかなか完成度が高い。閉じた時の背面ガラスとカバーディスプレイのベゼルやフレームをおおうバンパーのようなパーツで構成されており、取りつけると、ちょうど背面カメラの出っ張りがなくなるサイズ感。ケースとしては薄く、Galaxy Z Fold5の持ち味を損なわないのが好印象だ。
「Slim S Pen Case」を装着したところ。本体が薄いのはもちろん、ケース自体もスリムなため、装着しても操作感が損なわれにくい
しかも、S Penの収納がしやすい。S Penは背面のくぼみにはめ込むような仕様で、上部のスイッチでロックをかけられる。このスイッチを押し込むと、S Penがカチャっと外れる仕掛けだ。普段はしっかりロックがかかっているため、背面に露出していても、落とす心配がない。S Pen対応以降、もっとも本体と一緒に持ち運びやすくなった点は評価できる。
本体背面のくぼみに収納可能。カチッと止めるボタンがあり、紛失しづらい
ただ、ここまでS Penを小型化するのであれば、やはり本体に収納できるようにしてほしかったのが本音だ。その方が、ケース選択の自由度が上がるからだ。「Galaxy S23 Ultra」のように、本体にS Penが入れば、ケースなしで使うこともできる。薄型化や軽量化と同時にS Penの収納を実現するのはハードルが高かったのかもしれないが、次機種以降の対応に期待したい。
フォルダブルの形状を生かしたソフトウエアにも改善が施されている。フレックスモードで利用する際の、フレックスパネルがその1つだ。これは、半開きの状態で使うモードのこと。アプリによっては、画面が2つに分割され、操作は下半分で完結する。カメラなど、プリインストールされているアプリは、専用のユーザーインターフェイスを備えていることが多い。
フレックスモード専用のUIを備えたアプリは、画面下半分が操作パネルになる
一方で、非対応アプリにも、「ラボ」機能で強制的にフレックスパネルを表示させることが可能だ。このユーザーインターフェイスが変わり、タッチパッドがすぐに立ち上がるようになった。カーソル操作をしていると、あたかもPCを使っているかのよう。半開きの状態で使うと、映像を表示する画面が細い横長になってしまうのは難点だが、机やテーブルの上に置いたまま、作業をする際に便利な機能だ。
非対応アプリの場合、タッチパッドとして画面下半分を使うことが可能だ。このUIもわかりやすくなった
細かな点では、開いた時、画面下部に表示されるタスクバーに表示可能なアプリの履歴数を増やせるようになっている。Galaxy Z Fold4では2つだったため、それ以上のアプリを切り替えながら使う際に、少々不便だった。Galaxy Z Fold5では、これが最大で4つになった。その数は、設定で変更することが可能だ。こうした新機能は、過去のGalaxy Z Foldにも適用できそうなだけに、アップデートに期待したい。
本体下部のタスクバーに配置できる、最近使ったアプリのアイコン数を増やせるようになっている
フォルダブルスマホとしての完成度が高まったGalaxy Z Fold5だが、米国価格で1799ドル(約25万8000円)と、ハイエンドスマホの中でも群を抜いて高い。薄く、軽くなったのはうれしいものの、1つ前のモデルから機種変更するほどではないのが率直な感想だ。一方で、2世代前の「Galaxy Z Fold3 5G」を使っている人にとっては、進化の幅が大きい。画面比率が変わり、厚みや重量も一気に減るうえに、カメラも大きくアップデートする。より持ち運びやすくなったことで、フォルダブルスマホデビューするにもいい端末に仕上がったと言えそうだ。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★★
持ちやすさ ★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★★
UI ★★★★★
撮影性能 ★★★★
音楽性能 ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証 ★★★★★
決済機能 ★★★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。