脱ソフトドリンク・脱エナジードリンクの救世主?
コンブチャに含まれる抗酸化物質のうち、ポリフェノールは脂肪燃焼、糖質コントロールの助けになるため、ダイエット効果も見込めることがあるようだ。砂糖がたっぷり入ったソフトドリンクなどを低カロリー、低糖のコンブチャに置き変えることは大人だけでなく、子供の肥満対策にもよいだろう。
「芋にパスタにケーキ」のような、明らかに栄養が偏った給食を出すところもあるイギリスだが、近年では「食育」の概念も広がり、「ソフトドリンクによる砂糖の摂取過多」が問題になっている。多くのソフトドリンクが100mlに対して8g以上の砂糖を含有しているからだ。
その一方でコンブチャは砂糖含有量が低いものが多い。「エクイノクス(Equinox)」が2.5g、「レメディー(Remedy)」のノンシュガーにいたっては文字通り0gだ。
国が目を向けなければならないのは、児童の肥満化だけではない。年齢が上がるにつれ、近年イギリスの子供たちの間でエナジードリンクへの依存が問題となっているのだ。
日本でもよく目にする「モンスター」や「レッドブル」といったエナジードリンク(栄養ドリンク)が、ズラリと並ぶスーパーの棚
サウサンプトン大学とロンドン大学による8年間の共同調査結果によると、エナジードリンクには多量のカフェインと砂糖が含まれており、イギリス国内における最大の消費者は若年層、とりわけ貧困家庭出身の利用が目立つという。
エナジードリンクを多量に摂取する若者たちは、不健康な食生活を送りがちで、これら生徒たちの出席率と学習能力に影響が出ていることを心配する教師もいる。
つまりコンブチャは、子供たちの「砂糖とカフェインの過剰摂取」の切り札ともいえるのだ。
とはいえコンブチャにも問題がないわけではない。コンブチャには発酵によるアルコールが微量含まれている。顧客から多くの問い合わせを受けるため、ウェブサイト上で回答をしている「エクイノクス・コンブチャ」によると、同社製品のアルコール度数は0.5%に満たず、子供でも安心して飲めるというが……。
医療専門家チームが編集する『healthline』は、この度数はパン酵母が発酵時に生成するアルコールと同程度で、やはり問題ないとしているが4歳以上を推奨している。また自家製のもの、低温殺菌されていない市販品のなかにはアルコール分が高いものもあるので注意が必要だ。
ノンアルコール飲料ブームの後押し「イギリス発祥のドライ・ジャニュアリー」
1981年〜1997年の間に生まれた「ミレニアル世代」以降を中心に、イギリス国民のアルコール離れが進んで久しいが、微炭酸で爽やかな風味のコンブチャは、こじゃれたノンアルコール飲料としても注目を浴びている。
たとえば「Equinox Virgin Mojito」は、カクテルのモヒート味をしっかり感じ、残暑厳しい日本でもピッタリであろうノンアルコール飲料である。
275ミリリットル入りが定価で2.2ポンド(約398円)と求めやすいのも魅力の一つ
イギリスでは「ドライ・ジャニュアリー(Dry January )」というキャンペーンが2023年に10周年を迎えた。この場合「ドライ」とは「アルコールを飲まない」という意味で、文字通り「毎年1月の1ヵ月は禁酒しよう」という趣旨で、賛同する人たちは年々増えている。
インターネット上では、この期間中におすすめのドリンクとして、アップル・シナモン味のコンブチャを使ったモクテルのレシピや、静岡産の煎茶を原料にした「Left Field No.2 Sencha Green Kombucha Tea」などを紹介するウェブサイトもある。
大人のみならず子どもたちの肥満問題。若者たちのアルコール離れ。イギリスでは様々な要因によって、コンブチャは飲料の主流の一つになりつつある。
<参照リンク>
Holland&Barrett
NHS Digital
文・写真/パーリーメイ
2017年よりロンドン郊外在住。観光記事のほか、イギリスの日常生活で起きたエピソードをまとめたコラムを連載中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。