電気代の値上げを実施し、電力会社大手8社の2023年4-6月期の最終利益が9,000億円を超えました。東京電力は2023年6月1日から平均15.90%の値上げを実施していました。東京電力は2023年4-6月に1,362億円の純利益を出しています。
値上げによって電力会社が巨額の利益を得ていることに対して、SNSを中心に批判が殺到しました。国民に負担を強いて、巨大企業が大儲けしているように見えたためです。それは本当に正しいのでしょうか?
エネルギー不足で石炭に頼ったヨーロッパ
まず、ロシア産の資源の禁輸措置が、エネルギー価格にどの程度影響を与えたのか見てみましょう。天然ガスは2022年9月の価格が、同年1月と比較して1.7倍に上昇しています。石炭に至っては、11月の価格が1月比で2.8倍となりました。これは主にヨーロッパがエネルギー不足を解消するため、石炭燃料への依存度を高めたためです。
電力会社の収益源となる電気代には、燃料費調整という仕組みがあります。電気を作るのに必要な燃料の調達額を電気料金に自動的に反映するというもの。この仕組みによって、エネルギーの市場価格を織り込みながら、安定的に電力を供給することができます。
しかし、各電力会社は火力発電に必要な天然ガスや石炭価格が上昇する2022年冬を迎える前に、燃料調整額が働かなくなりました。これは価格の上限に達してしまったためです。
電力会社は価格転嫁できない分を負担しなければなりません。これにより、電力会社は大赤字を出すこととなりました。
燃料調整額で売上高は膨張するも大赤字に
東京電力は2023年3月期の売上高が、前年同期1.5倍となる8兆1,122億円に急増しました。これは主に燃料調整額が働いたためです。売上高がこれだけ押し上げられているにも関わらず、1,000億円を超える純損失を出しています。
東京電力は福島原子力発電所の事故処理に追われた2011年3月期から、3期連続で巨額の赤字を計上しました。そこから業績は安定していましたが、ウクライナ危機で再び大赤字を出すこととなりました。
※決算短信より
2023年3月期は電気代の上昇によって1兆8,390億円もの増益効果が働いたものの、円安と調達する燃料の高騰が2兆1,130億円もの減益要因となりました。単純計算で、2,617億円は電気代に反映しきれずに東京電力が負担したことになります。
東京電力は、2023年3月期に営業キャッシュフローが756億円のマイナスとなりました。営業キャッシュフローとは、文字通り本業で稼ぐ現金を表しています。マイナスは現金収入で経費を賄えていないことを示しており、資金繰りが悪化しているということです。
東日本大震災の時でさえも、マイナスに陥ることはありませんでした。苦しい懐事情が見え隠れします。
みずほ銀行や三井住友銀行は東京電力に対し、総額で4,000億円の緊急融資を行ったと2023年2月に報じられています。