ビールのおいしい季節。コロナ禍の自粛モードから解放された喜びも追い風となって、「ついついお酒が進んでしまう……」という人も多いのではないだろうか? そこで、肝臓をいたわりながら酒を楽しむコツを、専門医に伺った。
適量と飲み方を心得ればお酒は良薬に
体内で一番大きな臓器である肝臓は、栄養素の代謝、有毒物質の解毒、胆汁の生成と、健康を維持するための大きな責務を担う。飲酒はかつて、その肝臓にとって「百害あって一利なし」とも言われたが、果たして真相は?
「アルコールの分解・解毒のほとんどを担っているのが肝臓です。それゆえ一気に大量のアルコールを摂取すると、過度な負担がかかることは間違いありません。しかし、近年ではお酒を全く飲まない人よりも、適度な飲酒習慣がある人のほうが健康への相対リスクが低いという研究結果もあるんです」と栗原医師はいう。ただしそれは、〝適量〟と〝負担をかけない飲み方〟が大前提。
「肝臓の許容量を知って、つまみやお酒のセレクト、飲み方に少しだけ気を使ってみてください。きっと健康を維持しながら楽しく飲めるはずですよ」
週単位でアルコール量を管理すれば休肝日は必要なし!
厚生労働省が発表する、1日当たりの最も健康的な飲酒量は、純アルコール量で20g。とはいえ、生まれ持った体質や体型によっても、アルコール処理能力は異なるそう。
「医学的には、体重1kg当たり1時間で0.1gのアルコールを処理できるとされているので、目安にするといいでしょう。自分の適量を把握したら、週単位で飲酒量を管理してみる。たとえ1日の基準量を超えてしまった日があっても、残り数日の飲酒量を抑えめにして調整さえすれば問題ありません」(栗原医師)
つまり、1週間の基準量内に収まる飲み方ができれば、毎日飲んでもOK。休肝日が苦でない人は、ノンアルの日をつくることで、1日に飲む量を少し増やすこともできそうだ。
1日のお酒の適量(アルコール20g)目安
主なアルコールごとに1日の目安量を換算すると上記のとおり。好みのお酒の基準量を知っておくことで、飲みすぎ予防にもなる。
週単位の許容量の目安
許容量で言うなら男性で1日40gまでと、さらにその量が増える。女性は肝臓が小さく、女性ホルモンの影響もあり、男性より少なめ。
アルコール量の計算方法
アルコールの目安量を知る計算式。身体にいいアルコール量は1日7〜40g、節度を保つなら20gまで。1日60gを超えないことも大切だ。
体重で算出するアルコール処理能力
体重60㎏の人で、1日の基準量20gを処理するのにかかる時間は3時間以上。飲み終わるのが遅ければ遅いほど、夜通し肝臓を働かせる結果に。
実は「唐揚げ」こそ肝臓を守る最強つまみ
「一気にアルコールを吸収して肝臓に負担をかけぬよう、胃と腸にあらかじめ食べ物を入れておくことが何より重要。特にアルコールの吸収を遅くしてくれるのが、たんぱく質、食物繊維、油脂類です」(栗原医師)
そう考えると、意外と優秀なのが鶏の唐揚げ。「太るから」と敬遠されがちな揚げ物だが、肝臓のパフォーマンスを上げるには最適なつまみだそう。炒め物や、オリーブオイルを使ったカルパッチョ、アヒージョなども同様。また、居酒屋での「とりあえず」には、葉野菜や海藻、キノコ類、豆類など、食物繊維が豊富な食材を使ったつまみが有効。逆に、ポテトサラダやフライドポテトなど、糖質たっぷりのじゃがいもを使ったメニューは要注意と覚えておこう。
ビール、日本酒、ワインにも!「チェイサー」は身体を守る「魔法の水」
暑い日の「駆けつけ一杯!」はお酒好きの醍醐味だが、決して水分補給とはならないので、心得ておくこと。
それどころか「アルコールには利尿作用があるため、飲めば飲むほど体内の水分が失われることになります」と栗原医師。「脱水症状は肝機能を低下させる要因にもなるので、お酒を飲む時には必ず水=チェイサーをお供に。理想はお酒と同量。また、脱水状態でお酒を飲むのは非常に危険なので、飲み会がある日は日中から積極的に水を飲むなど、飲酒の前に水分をしっかり体内に蓄えて準備しておくことも大切です」
チェイサーといえば、ウイスキーなど度数の高いお酒の口直しのイメージが強いが、お酒の種類にかかわらず、健康に飲むためのサポート役と捉え、飲み会でも日頃の晩酌でも、積極的に取り入れよう。
飲む前に、飲みのお供に高カカオチョコ
水分補給と同様、おすすめなのが高カカオチョコレート。カカオに含まれるポリフェノールは、高い抗酸化作用のほか、血流、血圧、肝機能などの生活習慣病に効果があり、食物繊維も豊富。カカオ分70%以上で、5g程度の個包装になっているものを備えておくと、飲む前の栄養補給と肝臓保護、つまみとしても有効だ。