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キャラクター戦略部を新設した東映が見据える10年後の未来

2023.08.08

日本を代表する映画会社である東映株式会社が、同社の「主力ビジネスの1つであるキャラクタービジネスをより強化し、収益の最大化を目指す」ことを目指して7月1日付で「キャラクター戦略部」という部署を新設した。

これは、今年2月に東映が発表した中長期ビジョン「TOEI NEW WAVE 2033」で示した重点施策「映像事業収益の最大化」「IPライフサイクルの長期化」「グローバル展開へのチャレンジ」を推進するため、キャラクタービジネスを戦略的かつ統合的に展開していくことを目的としたものだ。

『仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊』シリーズをはじめとする東映が誇る数々のキャラクターがこの「キャラクター戦略部」の設立によってどういった展開がされていくのか、というのは@DIMEとしても気になるところだろう。そこで、同社の上席執行役員であり、キャラクター戦略部の部長を務めることとなった白倉伸一郎氏へのインタビューを前後編に渡ってお届けする。前編では東映が描く10年後のビジョンに関してお話を伺った。

白倉伸一郎氏
1965年、東京都生まれ。90年、東映に入社。翌年『鳥人戦隊ジェットマン』よりプロデューサー補として参加。92年の『真・仮面ライダー 序章』以降、『平成仮面ライダー』シリーズを手がけ、成功に導く。2022年6月より上席執行役員テレビ営業部ヘッドプロデューサー兼テレビ営業部長を務める。近年ではアマゾンプライムオリジナル『仮面ライダーBLACK SUN』に続き、『シン・仮面ライダー』にもエグゼクティブプロデューサーとして携わった。

映画会社としてはできなかったことを実現する

最初に気になるのは、「キャラクタービジネスを戦略的かつ総合的に展開していくこと」というのがキャラクター戦略部の設立目的ということだが、これまではどういう課題があると考えていたのか、そして、新部署の設立によってそれがどう変わっていくのかということだ。

白倉氏(以下敬称略):「戦略的かつ統合的に展開していく」のが目的だということは、これまでは戦略性や統合性が足りなかったということなんですね。東映は映画会社ですから、そのビジネスというのはある意味簡単で、映画が大ヒットすると、それにぶら下がる二次利用として、パンフレットやキャラクターグッズ、ビデオグラムも売れるし、テレビ放送や配信もある、海外展開もできる、といった仕組みになっています。

この形が当社のビジネスモデルです。そして、それに対応してメディアや用途ごとに部署が作られていて、まず一時利用と言われる映画があって、ビデオを売る部署、キャラクターグッズを作る部署、というようにメディアごと用途ごとに部署があるんです。

そうすると当たり前ですけどテレビ制作の担当はテレビ放送のことしか考えないんですよ。キャラクターショーの担当部署もまた同じようにイベントのことだけを考えるようになる。全部署がそうなるので、結果的に統合的な視点が欠けてしまう。

一次利用の映画やテレビがヒットすれば、みんなが儲かるっていう仕組みなんですが、でも、二次利用部門はどうしたら当たるのかっていうことを一次利用の部署は考えない。全体戦略を考える役割をどの部署も担っていないんです。

この体制だと、たとえば最近だとゲームから派生するとか、メタバースから展開するとかといったIPの開発ができないですよね。そういったこれまでの組織ではできなかったことを、戦略的かつ総合的に展開できるようにしていかなければならない。

先だって東映は中長期ビジョン「TOEI NEW WAVE 2033」というものを発表して、10年後にはグローバル企業になっているという夢を語っているんですが、じゃあそのグローバル展開はどうしていったらいいのかっていうのが今の体制の延長線上にはないんですね。せっかく中長期ビジョンを作ったのであれば、それをちゃんと実現していかないと、と。10年しかないですし、大慌てで(笑)。その中でも、キャラクタービジネスは大きなウェイトを占めているので、そこはちゃんと見据えてやっていかなくてはいけないなと思っています。

出典:「TOEI NEW WAVE 2033」

独立した部署として社内の利害を調整しつつ俯瞰して問題を解決する

しかし、そうしてグループ内のセクションを横断する形で統合する新設の部署であるということは、既存の部署の利害を調整するのも役割として含まれることが想定される。これまでの課題点を解消しながらそういった難しさにも直面していく面もあるのではないだろうか。

白倉:部門ごとに困ったことってあるじゃないですか。テレビだとコロナ禍でテレビ離れが加速してしまったとも言われていますし、一方で配信のウェイトはどんどん高まっていく。テレビの担当と配信の担当は別なので、どうやって手を携えていったらいいんだということも問題になる。また、子供向けキャラクターグッズを扱っている部署では少子化問題に直面している。これもまた、コロナ禍で出生率がさらに低下してしまって、もう何年か後には大変なことになる。このように、各部署ごとに問題を抱え込んでいる。それはひとつずつ潰していくのではなくて、全体的に解決していくしかないのですよね。

そういうこともあって、会長・社長の直轄部署として設立されました。各部署それぞれが長い歴史の中で試行錯誤しながらビジネスを構築してきたので、その中で変化を起こすのはどうしても難しいところがありますが、キャラクター戦略部は会長・社長の直轄部署だから、どこかの部署に偏ったりしない、ある意味フラットで平等な立場で相談しやすいということです(笑)

それは、どこにも属さない独立した部署であるっていうことが特に社内に対して明確でなければならないということでもあります。先ほどの中長期ビジョンの中でもコアになる「グローバル化」という意味でも、非常に重要な役割を担っている部署になっていきたい。担えなければそのビジョンは夢物語に終わってしまうような気がしますし。

年齢構成も意識して人員を配置、果実は次代が受け取ればいい

東映の中長期的ビジョンの中でも重要な位置付けを担わなくてはならないという「キャラクター戦略部」だが、白倉氏以外にはどういったメンバーが配属されているのだろうか。また、社内ではどのように受け止められているのだろうか。

白倉:私を含めて4名で、私以外に配信のプロ、マーチャンダイジングのプロ、イベントのプロがそれぞれ1人ずつという構成です。キャラクタービジネスに関連するビジネス的側面だったり、企画的なあるいは製作的な側面だったりっていう、東映が培ってきた叡智を集めてみたという形です。

正直、社内ではみんな首を傾げていますね(笑)。何をするところなんだろうって。私ふくめて部員たちもイメージが湧かないですよね、そういう働き方をしてきたことがないので。それをわかるようにしていくのは、部長である今の自分の役割かなと思っています。本当の果実は次の世代が受け取ればいいんだろうなと。

本来は新規部署が立ち上がった後、矢継ぎ早に次の東映のキャラクター戦略はこうだとかっていう具体的に発表できることがあればいいんですけど、それはこれから作っていくんですよね。70年に渡って培われてきた東映の組織体制を壊すというわけではなく、それはうまく活用しながら、そうではない動きを示していくっていうのは、年単位の時間が掛かると思うんですよ。普通にやると、目に見える果実を受け取れるのは早くても2年後くらいになってしまいます。でもそれだと遅いかなと思うんですよね。2033年、10年後があくまでもファーストステップで目先のゴールですが、そこへ向けて目に見える成果が早めにちゃんと建てられたらいいなと思っています。

新規キャラクター創出は部署設立の意義であり責務でもある

それぞれに専門性も世代も異なる精鋭を揃えることによって、中長期的に維持できる体制を確立しているという「キャラクター戦略部」。10年後の2033年、さらにその先を考えると、既存のキャラクターだけでなく、新しいキャラクターを創出する役割も担っていくのだろうか。

白倉:本来はそうです。テレビ発のキャラクターではないような展開、あるいは日本発ですらない展開といったことができるのが、従来の枠組みにはまらない新しい部署である意義だと思いますし、そういうことをしていきたいですね。

まだ発表できる具体的な企画等があるわけではないんですけど。『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』を筆頭に、従来のキャラクターを扱っていく以上は、多分に既存の部署が培ってきたビジネスモデルというのは必ずあるわけで、これまでだってうまくやってこられたじゃないかという声だって挙がって当然ですよね。いや、それがうまくいかなくなって問題があるからこその新しい部署ではあるんですけど、でもみんな100%の努力で取り組んでいるのに、それでは足りないでしょって言われると、やっぱり人間なので理屈はわかっても感情的にはカチンときますよね。そういう中で動き回るのは、新しい部署の部員たちもやっぱりしんどいところがある。これまでの部署を巻き込むにしても、できれば新規の、そこからは出てこないような案件の方が10年というストロークを使って育む意義がある気がしますね。

☆ ☆ ☆

約1時間にもわたって「キャラクター戦略部」、そして東映という会社が10年後、さらにその先を見据えて目指すべき方向についてざっくばらんに語ってくれた白倉氏。後編ではグローバル戦略とキャラクタービジネスの未来に関して話を聞いていく。

取材・文/小田サトシ

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