多くの企業が取り入れている1on1ミーティング。これは、部下に対して、「最近はどんな調子?」「何か困っていることはない?」と、カウンセラーのように丁寧にヒアリングし、モチベーションを引き出していくマネジメント法です。しかし、このやり方では仲良くはなれるものの、部下が成長しなかったり、自分の言うことを聞かなくなったりなど、思わぬ弊害が起こりえます。そこで、1on1を実施する上で注意すべき点は何か、執筆いたします。
そもそも1 on 1とは何か?
1on1とは1on1ミーティングとも言われる上司と部下の2名のみで行う面談を指します。もともとは給与を決めたりする際の評価面談として使われたのがきっかけですが、近年では評価に関わらず、部下を成長させることやメンタルケアなどの要素も含めて行われるケースがあります。
1on1の目的をはっきりさせよう
上司と部下が1対1で面談をすれば1on1をやっているということになってしまいますが、まず重要なのが1on1の目的をはっきりさせることです。部下が果たさなければならないミッションに対して、その達成の障壁となっている部下の課題や弱点の克服に焦点をあてたものなのか、あるいはもっと部下のプライベートや人間性に入り込んでいくことで部下の悩みを解消したりサポートしたり励ましていくことが目的なのか。この辺りをはっきりさせないと“なんとなく面談する”という結果になり、時間の無駄になりかねません。
1on1の注意点
なんとなく部下と面談をするのはやめましょうと前項でお伝えしましが、次に注意すべきことは“部下に引っ張られ過ぎない”という点です。やり方は違っても1on1のほとんどの目的は部下の成長にあるはずです。その中で、部下の成長を邪魔しているものを取り除こうとするアプローチは素晴らしいのですが、部下自身が“できない理由”を自分の癖や個性など人間性に関わる部分を一緒に持ち出してき、上司がそれに付き合ってしまうケースです。「僕はもともと~の癖があって」などから始まって、最終的には幼少期の教育環境に問題があったなどという話です。一見、成長を阻害していう要因について話をしているようですが、実際は“言い訳”を脚色しているだけです。もちろん人として話を聞いてあげるというスタンスは重要ですが、上司がこのような話ばかりに付き合っていては本来の1on1の目的を果たすことはできません。
1on1で絶対やらなければならないこと
1on1は部下個人に焦点があてられているため、部下の人間性や環境などに引っ張られがちですが、面談の内容がどのようなものになったとしても1on1で絶対やらなければならないことがあります。それは次の階段をのぼることを約束させることです。“前に進む”という約束と“階段を1段あがった時の景色や状態がどういうものか”を擦り合わせることです。この時ポイントはさらに2つあります。1つは“1段あがった時の景色や状態”をできる限りはっきりさせることです。部下はのぼったつもりでも上司から見るとのぼれていないという状態は避けなくてはなりません。もう一つは期限を決めることです。期限を決めないと「(上司)そういえばこの前の面談のその後どう?」「(部下)前には進んでいると思います」という状態が永遠に続いてしまいます。
会社全体で1on1をやろうとするときなどは人によって1on1のやり方にバラつきが出てしまいがちのため1on1におけるルールも必要になりますが、これについてはまた別の機会に記載したいと思います。
文/株式会社識学 渡邉健太