ピンクの髪色、弾き語り動画を突然投稿、エビ中のツアーファイナルでは最前列どセンターで声援……社長のタイムラインは今日も賑やかで華やいでいる。
ツイッターフォロワー数約19万、フォロー数は21万超。『岩下の新生姜』を愛し、『岩下の新生姜ファン』をそれ以上に愛しているのが岩下食品株式会社4代目社長・岩下和了氏( @shinshoga )だ。
今や幅広い世代を魅了し、料理にも酒の肴にも最適な『岩下の新生姜』は、さまざまなコラボにより認知度が急上昇。その要因はエゴサのスペシャリストでもある岩下社長のツイッターPRにあると思っていた。
だが、違った。
もちろんそれも一因なのだが、岩下社長は「ツイッターで商品をPRしようとは思っていない」と断言。ならば、なぜそこまでエゴサをしツイッターと向き合っているのか?また、一見ふざけているようなパフォーマンスや数々のコラボの奥に、いかなる企みがあるのか?
今回、多忙を極める最中、経営者としての想いからブランディング・マーケティング術まで包み隠さず語ってくれた。本記事ではそんな岩下社長の言葉を包み隠さずご覧いただく。
ツイッターでPRは意識していない。SNSの負の側面と生きる喜び
日本の社長の中には毎日SNSを利用し、エゴサしまくる人も多々いるだろう。しかし、岩下社長ほど「いいね」や「フォロー」まで地道に取り組む人がいるだろうか。
「毎日平均3〜4時間はツイッターと向き合っています。自発信のツイート、RT、リプライはすべて私ひとりです。2年前までは、いいねもすべて自分でしていましたが、今は定形サーチ(新生姜)のいいねのみ。日中は数人の社員に手伝ってもらっていますが、『いいね』したツイートはすべて、私自身が目を通しています」
「嫌になったこと?それは時間を奪われることと、目や肩への負担で酷い肩こりになってしまうことには毎日閉口していますね。正直つらいですよ。でも、ものすごく嬉しいことも多い。それにこれは大切な仕事です。仕事がある程度ツラいのはショウガないですよ」
SNS活用はビジネスにおいて、もはや当たり前のPR手段の一つであり、宣伝効果も見込める集客ツール。だが、岩下社長はそこに重きをおいてはいない。企業のブランドイメージ向上よりも、商品の宣伝よりもツイッターで得られる大事なモノがある。
「ツイッターは、私達がお客様の声を聞く量と質を劇的、飛躍的に向上させました。お客様相談室への声(電話、メール、お手紙:問い合わせを除く)は年間数十件でしたがツイッターで当社品や当社に関するツイートは、私がエゴサでいいねした数で、今や年間40万ツイートに及びます。およそ1万倍」
「これは技術革新の為せる技であり、こういう状況を企業が活かさない手はないと私は思います。お客様の立場で考える、それがマーケティングだと思っています。それも本当の生の声をリアルタイムで聞けるというのは大きい。時として、経営判断の独りよがりも是正してくれますしね」
「ただ、ツイッターではそれほどPRを意識していません。ですが、お客様の生の声で高評価、ご支持が頂けている場合、それを拡散させて頂ける仕組みはとてもありがたく、そういう本当の声こそがPRなのだと思います。そうしたお客様に「いいね」や「フォロー」、「大切なお客様」へのリストイン、ときに「RT」、そして今は本当に僅かしかできませんが「リプライ」という、私なりのお礼のメッセージを「通知」を通して届けられることがありがたいです」
「そんな双方向性により、ゆるやかな絆をファンとの間で形成できるのが素晴らしい。そして無償で世界に応援の発信を繰り返して下さっている方々にせめてもの恩返しで楽しんで頂こうと思えるのがSNSのいいところでしょう。SNSには負の側面も確かにありますが、プラス面を見れば、こうして生きる喜び、働く意義を与えてくれてもいます。それと比べれば宣伝やPRなんて大した話ではありません」