こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
今回はコロナで大打撃を受けたパチンコ業界での事件を解説します。
ザックリいうと、
パチンコ会社
「ウチはもう経営が厳しいんです」
「みなさま、退職していただけませんか」
何名かは応じました。しかし、Xさんは応じず。特別退職金30万円を提示されたましたが応じず。
会社は整理解雇に踏み切りました。
裁判所
「今回の整理解雇はOKです」
▼ 本日のポイント
・整理解雇がOKになる4条件とは?
・「ウチ、経営が厳しいんで整理解雇!」が常に通るとは限らない
以下、分かりやすくお届けします(HES事件:東京地裁 R4.12.7)
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
・パチスロ機械の製造販売などを行う会社
・従業員は7名(R2.11の整理解雇当時)
▼ Xさん
・正社員(入社14年目)
・遊戯機器の営業
どんな事件か
そもそもの不況に加え、コロナの感染拡大が大打撃となりました(R2)。
R2.11時点での会社の預貯金残高は55万3268円にまで激減していました。会社は従業員に窮状を説明し、4名が退職勧奨に応じて退職することになりました(退職金は出ず)。
しかし、Xさんは退職勧奨に応じませんでした。社長は「特別退職金として30万円を支払う」と申し出ましたがXさんは承諾せず。
R2.11.27、社長はXさんを整理解雇しました。整理解雇した理由は、極めて厳しい経営状況に立たされて大規模な縮小をせざるをえない状況になったというものです。
Xさんが「整理解雇は無効だ!」と提訴。
ジャッジ
裁判所
「今回の整理解雇は有効です」
ーーー 理由は何ですか?
裁判所
「整理解雇がOKかどうかは、以下の4つの要素をミックスして判断します」
1. 人員削減の必要性はあるか
2. 解雇を回避する努力をしたか
3. その人を選んだことに合理性はあるか
4. 解雇手続きの妥当性
■ 説明
この判断手法は確立されています。(東洋酸素事件:東京高裁 S54.10.29)
裁判所の判断を順番に見ていきます。
▼ 人を減らす必要あったのか?
裁判所
「人員削減の必要性は高い」
〈理由〉
・パチンコ業界全体が構造的に不況
・会社は取引先を失って売上が減少
・経常損失の状況が続き、繰越寝室金額も増加
▼ 解雇を避ける努力をした?
裁判所
「解雇回避のための努力義務も尽くした」
〈理由〉
・支出を減少させた
会社所有の車を売却、旅行交通費や地代家賃も減らした
・社長の役員報酬を月額10万円にした
(Xさんの基本給を大幅に下回る金額)
・従業員の昇給を停止、ボーナスの不支給
▼ 人選に合理性はある?
裁判所
「合理性あり」
〈理由〉
・社長と妻を除いた従業員に対して退職勧奨をし、これに応じなかったXさんだけを整理解雇した
▼ 整理解雇に至った手続きは、正しい?
裁判所
「手続きも相当」
〈理由〉
・会社はXさんに配慮していた
解雇したR2.11までの間、会社は、Xさんに対して労働条件の変更を求めてあり、Xさんが転職できるように取引先に働きかけたりしていた。
・社長が窮状をXさんに説明していた
社長は手書きの表をXさんに見せながら、会社の経営が厳しい旨説明していた。
・退職金30万円の支払いを提案していた
他の従業員には退職金を支払っていなかったが、Xさんに対しては、特別退職金として30万円の支払いを提示していた。
というわけで、今回の整理解雇はOKとなりました。
整理解雇ダメ〜となったケース
もあります。業績不振を理由に整理解雇したのですが、ザックリいうと裁判所は「財務書類も出さずによく言うよ、整理解雇はダメ!」と判断しました(ゼリクス事件:東京地裁 R4.8.19)
さいごに
「ウチ、経営厳しいんです」と主張するには、キチンとした書類に基づいた的確な説明が必要なんです(貸借対照表・損益計算書など)
▼ 相談するところ
キチンとした説明もなく整理解雇を匂わされている方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。
労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
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