「老舗」の看板がひっそりと姿を消している。その原因はいったい何なのだろうか?
帝国データバンクはこのほど、「老舗企業」の倒産発生状況について調査・分析を行い、その結果を発表した。
消えゆく「老舗」の看板 老舗企業の倒産、4年ぶり増加
業歴100年以上の「老舗企業」の倒産は、2023年1-6月に合計38件発生した。前年同期の33件に比べて1割超の増加となったほか、1-6月としては19年(58件)以来4年ぶりに前年を上回った。ただ、倒産する前に自ら休廃業を決断する場合もあり、実際に市場から退出した老舗企業の数はさらに多いとみられる。
業種別にみると、最も多いのは食品関連を中心とした製造業で全体の約3割を占めた。一方で、食品スーパーが多くを占めた小売業、宿泊業といったサービス業など「B to C産業」の割合が約4割を占め、3年ぶりの高水準だった。コロナ禍以降、こうしたB to C産業における老舗企業の倒産は減少したものの、21年をボトムとして、再び増加傾向に転じている。
足元では、老舗の「看板」を生かし、過剰債務を切り離して再出発を選択したケースもある。ただ、元来より経営が厳しかったなか、各種補助金やゼロゼロ融資などで耐え忍んできた老舗企業も少なくない。物価高や人手不足、さらに従業員の高齢化や後継者の不在といった変化に耐え切れずに事業の継続意欲を喪失し、市場退出を決断した老舗企業が多くみられた。
日本は業歴100年以上の老舗企業が全国で4万社を超える、世界有数の“長寿企業大国”で知られる。長年の経験に裏打ちされた有形・無形の教訓や、経営資源を蓄積している老舗企業の存在は、雇用確保の面からも地域経済の担い手として重要だ。ただ、近年は少子高齢化による国内市場の低迷に加え、新興・海外企業の参入など、事業環境は目まぐるしく変化している。「老舗の看板」を有するだけでは生き残りが難しい局面が続く。
<調査概要>
集計期間:2023年6月30日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい