コロナ禍で瞬く間にブームとなった唐揚げ店。一時期、専門店の出店ラッシュが続いていたが、今、その人気に陰りが見られているようだ。
帝国データバンクはこのほど、「唐揚げ店」の倒産発生状況について調査・分析を行い、その結果を発表した。
唐揚げ店の倒産が過去最多に ブームが一巡、出店競争も激化
コロナ禍で瞬く間にブームとなった「唐揚げ」に異変が起こっている。持ち帰りを中心とした「唐揚げ店」運営企業の倒産は、2023年1-6月に9件判明。これまで最多だった21年(6件)を上回り、過去最多を更新した。ただ、唐揚げ店の多くは1~2店を展開する小規模な事業者で、水面下の廃業や閉店を含めれば、実際はより多くの唐揚げ店が淘汰されたとみられる。
コロナ禍で急拡大した「中食」需要のなかで、冷めても味が落ちにくく、自宅での調理が敬遠されがちな唐揚げが、手軽な持ち帰り総菜として人気を集めた。店舗側でも、少ない店舗面積など初期投資が低く、オペレーションが容易で、原料も安価な鶏肉であることから新たな飲食ビジネスとして唐揚げに注目する企業が増え、ここ数年で爆発的に店舗が増加した。
一方、近時は急激な出店が続いたことで都市部を中心に競争が激化し、大手では出店ペースを抑制するなど、市場は徐々にレッドオーシャン化が進んでいる。外出制限が緩和されたことで持ち帰り需要も一服感が出てきたほか、輸入鶏肉や食用油など原材料価格も急騰。
強みだった「原価の安さ」が活かせず、仕入原価の上昇に耐え切れずに経営破綻したケースも見られた。足元ではこうした原材料価格の高騰も背景に唐揚げ価格も引き上げが続くものの、B級グルメゆえに「大幅値上げは難しい」といった声も聞かれ、経営の舵取りは次第に難しくなっている。
足元では安価なムネ肉を使った唐揚げや、素材や作り方にこだわった唐揚げなど、差別化戦略が進んでいる。都市部に比べて相対的に店舗数が少ない地方などでは市場拡大の余地も残るものの、消費者の胃袋をつかめなくなった唐揚げ店で今後淘汰が進む可能性がある。
<調査概要>
集計期間:2023年6月30日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい