「退職するんだ。それで次はどこで働くの?」
転職が決まり、現職の退職手続きを進めていると聞かれることが多いこの質問。筆者も会社員時代は上司や同僚など何人もの人に聞かれ「それって、言わなければならないことなの?」と心の中で思っていました。
今回は「転職先は言わない」ことに問題はないのかや、伝えることのリスク、他の伝え方があるかを解説していきます。
「転職先は言わない」は問題ない
結論からいうと、転職先は言わなくても問題ありません。伝えたくないのに伝えなければならない理由はないからです。法律上の義務もないので、安心してください。
「転職先は言わない」ほうがいい3つの理由
転職先は言わなくても問題ないと説明しましたが、そもそも転職先を言わない選択肢なんて思いつかなかったという人もいるでしょう。
もちろん自分で言いたいと思っているなら、言っても何の問題もありません。
なぜ転職先を言うことに躊躇してしまう人がいるのか、理由を3つ挙げていきます。これらを考慮したうえで、言うか言わないかを決めましょう。
1. 退職日まできまずい
現職よりも条件がよい会社に転職する場合、応援してくれる人もいれば、妬みに似た感情を向けてくる人もいるでしょう。きまずさに耐えられない人であれば、最初から転職先は伝えないほうがよいかもしれません。
2.ツテを期待される
「私もその会社に転職したいです」と言う人が出てくる可能性もあります。特に知人を紹介するリファラル採用をとっている会社なら、強くお願いしてくる人も出てくるかもしれません。「自分も一緒に引き抜いてほしい」と言ってくる部下もいるでしょう。
退職して会わなくなってしまえばお断りできることも、在職中にいつも顔を合わせる人から言われ続けたら、ストレスに感じるのではないでしょうか。
3. 転職先に噂を流される
誰と誰がつながっているかわからない社会。転職先に現職の知り合いがいる可能性もあります。同業種への転職ならその可能性は高いでしょう。
「うちの会社にいた〇〇さんが、そちらに転職するらしいから、よろしくね」ぐらいの情報提供ならよいでしょうが、中には妬みの気持ちから、あることないこと噂を流す人もいるかもしれません。もしくは悪気はなくても「〇〇さん、うちの会社で超優秀だった人だよ」と勝手に転職先の期待値を上げる人もいるでしょう。
その情報を転職先の人たちが信じるか信じないかは別として、「新しい環境でスタートを」といった気持ちに影響を与えることは確かでしょう。
「転職先を言わない」場合、気まずくならない伝え方
転職先は言わないと決めたからといって、「お伝えできません」「言う必要はありません」とだけ伝えたら、相手を戸惑わせてしまうかもしれません。
「もう会わなくなる人だし、そこまで気を遣わなくてもよいのでは」と思うかもしれませんが、仕事は信頼関係のうえで成り立っています。どこでまた同じ人と一緒に仕事をするかはわかりません。
角が立たない、伝え方のポイントを紹介します。
1. 業界のみを伝える
具体的な企業名ではなく、業界名を伝える方法があります。金融業界や不動産業界とだけ伝えられても、企業名までは特定することは難しいでしょう。
2.「まだ確定していない」と伝える
「仕事内容や条件がまだ確定していないので伝えられません」「まだ選考中の企業があるので、転職先は確定していません」と伝える方法もあります。この伝え方だと納得してそれ以上質問してこなくなる人も多いと考えられます。
3.「転職先の詳細は、今はどなたにもお伝えしないようにしているので」
この伝え方をするときは、一貫した態度が大切です。
中には「Aさんは口が堅いから」「Bさんにはお世話になったから」と例外的に伝えてもいいと思える人もいるでしょうが、現職の関係者には基本的に知られたくないのであれば、誰にも言わないを徹底することをおすすめします。「転職先の詳細は、今はどなたにもお伝えしないようにしているので」といった説明ができるからです。
どんなに口が堅いと信頼している人でも、絶対に情報を漏らさないとは言い切れません。「転職先の詳細は、今はどなたにもお伝えしないようにしているので」と言われたにもかかわらず、他の人には言っていると知られたら信用問題にかかわります。
実際筆者は過去に「他の人に知られたら面倒だから言いたくないけれど、この人になら伝えても大丈夫かな」と思った人がいました。「他の人には言わないでね」と前置きして伝えたにもかかわらず、1週間後には何人もの人が転職先の企業名を知っていたことに愕然としてしまいました。
転職後も積極的に関係を築いていきたい人には「転職後に改めてご挨拶させていただきます」と伝えましょう。
〇〇〇
何かを隠そうとしたり、ごまかそうとしたりする人を見ると、人はネガティブな想像力をかき立てられるもの。今回お伝えしてきた通り「転職先を言わない」ことは問題ないのですから、堂々と一貫とした態度で接しましょう。
また、最近は転職先への情報の持ち出しなどがニュースになることも増えています。転職の際は守秘義務などルールの見直し・徹底はもちろん、特に競合企業へ転職する際は誤解されるような行動はとらないよう気をつけましょう。
文/やまさん
保有資格:キャリアコンサルタント(国家資格)/キャリア・デベロップメント・アドバイザー(日本キャリア開発協会)