「IBM」は何の略?
ビジネスやコンピューター関連のニュースでは、『IBM』という単語を目にする機会も多いでしょう。IBMとは、何の略称なのでしょうか?正式名称や概要を紹介します。
「IBM」の正式名称
『IBM』は『アイビーエム』と読みます。『International Business Machines Corporation』の略称です。IBMはアメリカにある、ソフトウェアやコンサルティング・サービスを提供する会社で、AIソリューションの開発・販売でも知られています。
1911年、ニューヨーク州で設立された会社『Computing-Tabulating-Recording(C-T-R)』がIBMの前身です。1924年にはIBMへと社名が変更されました。
1950年代には大型コンピューターの開発を開始しており、現在では約170カ国でビジネスを展開する大手テクノロジー企業です。
日本IBMの創立は1937年
1937年に創立された『日本ワットソン統計会計機械株式会社』が、日本IBMの始まりです。その後、日本インターナショナル・ビジネス・マシーンス株式会社へと社名変更が行われ、1959年2月に現在の社名である『日本アイ・ビー・エム株式会社』となりました。
横浜に事務所を置いたのが始まりです。その後、東京へ本社を移し、現在は中央区日本橋箱崎町に本社を構えています。全国の主要都市に拠点があり、各地でソフトウェアの販売やコンサルティング・サービスの提供を行っており、アメリカ本社と事業内容に大きな違いはありません。
IBMの現状
IBMは、創立当初は電子計算機の会社として名を馳せていました。その後、コンピューター開発やコンサルティング業務を経て、現在も成長を続けています。IBMの現状や、他社との提携状況について見ていきましょう。
メインフレームからクラウドシフトか?
IBMは、1950年代から大型コンピューターの開発に乗り出していることからも分かるように、現在でも業務用の大型コンピューターである『メインフレーム』を開発している会社です。
しかし2018年には、複雑化しやすいメインフレームを含む『レガシーシステム』が企業のDXを阻む一因になっているのではないかと経済産業省から提言があり、クラウドへのシフトは避けられない問題であると受け止められています。
IBMは『メインフレームはレガシーシステムではない』との見解の下、新システムを発表し、話題となりました。レガシーシステムとは古い技術を使ったシステムのことであり、必ずしもメインフレームを指すわけではありません。
IBMの新システムはクラウドとのハイブリッドが可能となっており、今後もメインフレーム開発からは撤退しないと見られています。
AWSのビジネスパートナーに
AWSは『Amazon Web Services』の略称で、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスを指します。IBMは2022年5月11日、AWSとの提携を発表しました。具体的には、IBMが提供する一部のソフトウェアを、AWS上で使用できるようになるというものです。
この提携により、これからAWS・IBMの利用を始める層は簡単に両サービスを活用できるようになり、すでにIBMのサービスを利用している場合はクラウドへの移行がスムーズになります。
AWSはクラウドサービスの中でもシェアが高いサービスです。AWSとIBMの協業によって、よりいっそうDXを推進できるようになると期待されています。
IBMの実績と「これから」
IBMは、数々の実績を残してきた企業です。主な実績や、今後の動向について詳しく見ていきましょう。IBMが提供するサービスや、特徴についても紹介します。
IBMの実績
IBMは世界的に有名な企業で、多くの実績を残しています。特に本社を構えるアメリカでは特許取得数の多さで知られており、2021年には特許取得数1位、2022年には2位を獲得しているのが特徴です。有名な賞を取得している従業員が在籍し、ノーベル賞受賞者も複数人含まれています。
各国で、環境問題に関する受賞歴があるのも特徴です。アメリカではClimate Leadership Awardを複数回受賞し、温室効果ガスの管理を徹底するなど気候変動を抑える試みに貢献しています。さらに、メキシコではEnvironmental Excellence Award、フィリピンでもOutstanding Energy Awardを受賞しました。
日本では、『女性が輝く先進企業表彰』で内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰を受けていることから、女性の活躍を推進している企業であると分かります。
IBMの存在意義
IBMはソフトウェアやコンサルティングなど、ビジネスにおける重要なサービスを企業や官公庁などに提供している会社です。日本IBMによると、IBMでは『Be Essential.』というスローガンが掲げられ、社会や顧客にとって必要不可欠な企業になることを存在意義としています。
IBMの創業期には、創業者であるワトソンが『THINK』をスローガンに掲げていたことが知られています。THINKは『考える』という意味で、新しい技術やアイデア、これからのビジネスを進めていく上で、『真剣に考える』行為が重要という主張です。
どちらのスローガンからも分かるように、IBMは『成長』『革新』を大切にしており、従業員にも徹底しているといえるでしょう。
IBMが目指すもの
IBMでは、新しい概念として『コグニティブ』を提唱しています。コグニティブとは、主に『人間を支援するためのシステム』を指す言葉です。
既存の『AI』は、人間の代わりに業務を遂行するためのシステム・道具ですが、コグニティブは人間との競合が起こらず、人間とAIの共存を実現してくれます。
IBMでは2023年7月11日に、新たなコグニティブ・システム『IBM watsonx』の提供を開始しており、基盤システム・データストア・ツールキットで構成されたパッケージの導入が可能です。
IBMの技術はこんな場面でも活用
IBMは数多くの技術を開発し、提供を続けている企業です。企業向けのコンピューターやソフトウェア以外にも、さまざまな場所で技術が活用されています。IBMから生まれた主な技術と、使われている事例を紹介します。
アポロ月面着陸
IBMは1950年代、他社に先駆けてコンピューターの開発を始めており、1969年のアポロ11号による月面着陸の際にもシステムを提供しました。アポロ計画以前の宇宙飛行にも関わっており、IBMは月面着陸の立役者です。
アポロ計画の際には4,000人もの従業員が携わっており、エンジニアや技術者が飛行制御装置を作り上げ、宇宙飛行に貢献しました。
月面着陸以降も宇宙飛行のミッションに参加し、多大な貢献を続けている先進的な会社です。
磁気ストライプ・バーコード
IBMの技術は、クレジットカードの磁気ストライプや、『UPCバーコード』にも使われています。UPCバーコードは商品に付帯し、レジで読み込むと価格を認識できる黒い線の集合体です。
現在ではクレジットカードの磁気ストライプはICチップに置き換わっているものの、IBMは小型ICチップの開発にも参入し、現在でも最先端の半導体技術を各分野に提供し続けています。
磁気ストライプやバーコードの技術は小売業界における変革を推し進め、機械による業務効率化を可能にしました。
レーシック手術
レーシック手術は、レーザーによる視力矯正の手術です。IBMは、レーシック手術に使われているエキシマレーザーを1980年代に開発しました。アメリカの眼科で商業用として認められたのは、1995年のことです。
レーシック手術は高い効果を持ち、治癒にかかる時間も短いため、多くの人が手術によって視力矯正を実現しています。エキシマレーザーはレーシックだけでなく、角膜混濁の治療にも使われており、幅広い分野で視力の維持・回復を助けている技術です。