JR西日本の交通系ICカードICOCAは、今年3月にAndroid向けのモバイル版が登場していた。それに続き、Apple Pay向けのサービスが先ごろ開始された。
これは関西圏のみならず、首都圏にも大きな影響を与える出来事ではないかと筆者は確信している。
小学館は東京都千代田に所在する出版社だから、そこで書いているライターはどうしても「東京寄り」の物の見方になってしまいがちだ。
しかし、日本経済は首都圏のみで構築されているわけではない。ここは東京から離れ、日本第2の経済圏から「モバイル交通系ICカードの実用性」を観察してみよう
「西の交通系ICカード」がようやくモバイル化
江戸時代、江戸と大坂即ち現在の東京と大阪は東海道という旅行街道で接続されていた。
これは旅行者のみならず、商人にとっても重要な道路だった。たとえば江戸の薬種問屋が大坂にある取引先から100両分の高麗人参を購入する時、番頭もしくは手代を大坂へ行かせて商談をさせる。
が、この番頭に100両の現金を持たせるわけにもいかない。従って、彼には両替商が発行した為替手形を持たせる。両替商が薬種問屋から100両預かっていることは、早飛脚によって薬種問屋の番頭が大坂に来る前に伝えられている。
驚くべきことに、江戸時代にはこうしたキャッシュレス決済システムが完備されていたのだ。
それを考慮すると、現代の交通系ICカードはもっと早く我々の先祖を見習うべきだったかもしれない。
6月27日、JR西日本の交通系ICカードICOCAがApple Payに対応するようになった。言い換えれば、iPhoneとApple WatchでICOCAを利用できるようになったということだ。
「iPhoneの普及率が高い」と言われている日本、しかし一方でこの国は交通系ICカードが広く浸透し、しかもその交通系ICカードは1銘柄だけではない。これは外国人の目からは、極めて複雑怪奇な光景に映っているに違いない。
さらに言えば、モバイル化されている交通系ICカードは2銘柄しかない。SuicaとPASMOである。いや、先日まではこの2銘柄しかなかったと書くべきだ。
今年から、そこにICOCAが加わった。