過度なポジティブ思考はパフォーマンスを下げる
「自分って最高」
「わたしって、なんてかわいいんだろう」
「おれは、こんな業績を上げるくらいすごい人なんだ」世の中には、こう自分のことを思っている人がいます。
こういうタイプは自分に自信があるため、ポジティブ思考でさぞかしパフォーマンスも高いんだろうなと思うかもしれませんが、2021年に発表された最新研究で、このような人には、ある危険が伴うことがわかっています。
実験では、5分間だけ2種類の「脳内トーク」(「自分を尊敬する言葉」と「自分を批判する言葉」)を心の中で言ってから、試験に臨んでもらったのですが、こんな結果が出ました。
A.「自分を尊敬する言葉」を言った人たち→成績はほぼ変わらなかった
B.「自分を批判する言葉」を言った人たち→成績が上がった
実際に「脳内トーク」したあとの脳の状態をMRIで調べてみると、自分を尊敬する言葉を言ったグループは、脳の報酬系(即座核)に関連している部分が活性化していました。つまり、脳はうれしいと感じています。
にもかかわらず、なぜ成績が変わらないのでしょうか。それは、こんな脳の働きが影響しています。
自分をほめすぎると、過剰な自信を生み出す
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ゆとりが生まれて緊迫感がなくなる
↓
脳の注意力が下がる
↓
本来のパフォーマンスを発揮できない
たとえば、東京に住んでいる人は、東京タワーにあまり行きません。
なぜなら、いつでも行けると思うからです。いつでも行ける余裕の状態(自信がある状態)になると、行こうという気持ちがそこまで上がらないのです。
100%実現できると思うと、人はやる気が出なくなってしまうことが、米国の研究でわかっています。
一方で、自分を批判したグループの脳の状態は、一時下がるのですが、脳は「できるかどうかわからない状況」にいて、どうにか目標をクリアしようと集中力とモチベーションを上げ、遂行能力が高まるのです。
スポーツの世界でも、これまでプラスの「脳内トーク」ばかりが注目されてきましたが、近年は自分をあえて批判する言葉が、身体能力を上げることもわかってきています。
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いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com