「ダイエットしたいと思いながら、つい食べすぎてしまう」「忙しすぎて、自分のやりたいことをする時間がもてない」「相手にハッキリ言うことができず、ストレスを感じた」「ついスマホを見すぎて、時間をムダにしてしまった」など、思いどおりにいかない自分に苛立だったり、自分を責めたりしたこはないでしょうか?
日々の生活の中で、意志が弱く、なかなか思いどおりにいかないことってありますよね。でも、実は自分を変えることができるかどうかに、意志が強いか弱いかは関係ないそうです。
意志の力に頼るのでなければ、どうしたらいいか。その答えは「言葉の力」を利用することだそうです。人は1日の中で、自分との会話「脳内トーク」を何千回から何万回も行っていると考えられています。つまり、脳は「脳内トーク」の影響を多大に受けているのです。
それなのに私たちは他人と話す技術は学ぼうとするのに、なぜ自分と話す技術は学ばないのでしょうか? 今回は最新の研究データに基づき、誰でも簡単に「脳内トーク」を変えられる方法を、わかりやすく解説した脳科学者の西 剛志さんの著書「世界一やさしい自分を変える方法」の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします!
「脳内トーク」の技術を駆使して、脳をよい意味で騙し、自らを成功へと導いてください。
ポジティブ思考には限界がある
何か困難に直面したとき、
「私は絶対にできる!」
「これを乗り越えれば、もっとレベルアップできるはずだ!」
「みんなで力を合わせて乗り越えよう!」
など、世の中には「とにかくポジティブであることが正義だ」というポジティブ信仰があるようです。もちろん、自然とポジティブに考えられる人であればよいのですが、それがなかなか難しい人だっています。
楽観主義と悲観主義に関するこんな実験があります。米国ウェレスリー大学の心理学専攻のノレム教授らが2002年に行ったものです。
■実験
・被験者を集めてダーツを投げてもらう
・被験者は、楽観主義の人のグループと、悲観主義の人のグループに分けた
・全員に、ポジティブなイメージ(ダーツで高得点を得る)をもってダーツをやってもらう
■結果
・的中率が上がったのは楽観主義の人だけだった
・悲観主義の人たちは、ポジティブなイメージをもってダーツをやっても的中率は上がらなかった。その後、「こんな失敗をするかも?」といったネガティブなイメージをしてダーツを投げてもらったところ、ダーツの的中率が30%上がった
悲観的に考えることはよくない効果をもたらすというイメージがありますが、実はそうではないということがわかった実験結果です。
悲観主義者にとって、「物事がうまくいかないことを想像する」ことは、リスクを回避したり、先手を打つ方法を考えることになるため、彼らにとっては心理的に安心できる状態になり、パフォーマンスが上がるのです。
また、ダイエットの実験でも、ポジティブ思考で考えるだけではうまくいかないことが証明されています。
■実験
・肥満の女性を集めて、1年間の減量プログラムに参加してもらう
・目標をヒアリングして、「実際の食事の場面でどのようにふるまうか」を想像してもらい、次のようなグループに分けた
① 目標は前向きで、「私は誘惑にも負けない」と思うグループ
② 目標は前向きだが、「誘惑に負けて食べてしまう」と思うグループ
■結果
1年後に最も減量効果があったのは、②の目標+「誘惑に負けて食べてしまう」と思うグループだった
これは、ネガティブな思考が必ずしも悪い結果をもたらすわけではなく、むしろプラスに働くことも示しています。
私たちは、ポジティブ思考の状態にあるとき、想定もしていなかった困難に遭遇すると動揺し、正しくない選択・行動をしてしまうことがあります。
しかし、事前に目標を達成する上で遭遇しうる困難を想定しておけば、実際に問題にぶち当たってもそれを乗り越えることができるのです。
どんな分野でも、成功している人にインタビューすると、夢ばかりイメージしている楽観主義の人は皆無です。彼らは最高のイメージだけでなく、最悪のことも同時にイメージしています。
私は、このことをダブル思考(最高と最悪の両方を考える思考)と呼んでいます。
私たちは期待どおりにいかないと落ち込むことがありますが、それを防ぐために事前に最悪なことを想像しておくのです。
何かにチャレンジするときには、「きっとうまくいく」と思うと同時に、「これだとうまくいかないかも」という「脳内トーク」をもって臨むことを強くおすすめします。