リンチ流投資術「PEGレシオ」とは
投資の世界で「バリュー株」といえば、実際の企業価値よりも割安な銘柄を指します。
そして割安かの判断材料としてリンチはPER(株価収益率)を用いており、一般的にPERが15倍以下であれば割安、15倍以上であれば割高と判断されます。
とはいえ、低PERに必ずしもこだわることがリンチ流というわけではありません。
実際「PERが少々高くても企業の成長性に大きな期待ができるのであれば、PERが高くても良い」と発言しています。
こうした企業や市場の成長性を加味した指標が「PEGレシオ」です。
これはPERをEPS成長率(1株当たり利益成長率)で割って計算したもので、一般的な目安として、2倍を超える銘柄は割高、1倍を超える銘柄はやや割高、0.5~1倍は割安、0.5倍以下は超割安の銘柄と考えられます。
とはいえ、これはあくまで判断材料であるため、該当銘柄の業績を四半期毎に確認してPERとPEGレシオの数字の推移を継続的に調べることが大切です。
こうしたリンチの投資手法は今日でも多くのバリュー投資家に支持されています。
リンチ流銘柄の選び方
リンチの銘柄選択の大きな特徴のひとつが、たびたび話題となる「テーマ株」に見向きもしないことです。つまり、リンチはテーマとなる前の段階で投資することで大きな利益を狙っているのです。
そして、リンチ流銘柄の選び方としては下記のような特徴があります。
①注目されていない銘柄
②シェアを伸ばしやすい銘柄
③自社株買いをする銘柄
まず①に該当する銘柄とは、実態とは異なるイメージによって過小評価されている企業です。社名が地味であったり、採算の悪い企業の中で好決算であった部門を分離独立させたばかりの注目されていない企業、機関投資家が保有していない企業などが該当します。
次に②に該当する銘柄とは、主に産業全体の成長率が乏しく新規参入が少ない企業やニッチ産業などが該当します。こうした企業は経営が安定しているだけでなく、キッカケひとつで異業種に参入するなど大きく業績が変化することがあります。
次に③に該当する銘柄とは、そもそも自社に自信がないと自社株を購入しないため「自身の表れ」のバロメータと考えられます。
これら①〜③に該当する銘柄を粘り強く探し続ける日々の情報収集が何よりも大切だと考えています。
その一方、テンバガーを発見するには調査だけでなく、身近な人や実際に使っている消費者の意見がチャンスを見つける上でとても重要だとも語っています。
言い換えれば、多くの投資家は「他の投資家が注目していない」という理由だけで購入を渋っており、特にウォール街の投資家は「購入しない理由を探すこと」にフォーカスしすぎな傾向があることをリンチは指摘しています。
リンチの格言「花を引き抜き、雑草に水をやる」
投資家として名を馳せたリンチですが、多くの成功だけでなく失敗した苦い経験もしています。その代表例の1つがワーナー株の売却です。購入後すぐに株価が上昇し、リンチ自身は少し不安を感じており、周囲の意見を求めると「売り時」という声が多い状況でした。このとき、リンチは何度も財務諸表を調べてファンダメンタルズとしては株保有に問題がなかったにも関わらず、ワーナー株が38ドルに上昇した時点で手放しました。
その後、ワーナー株は180ドルまで上昇してリンチはとても後悔したそうです。
このときのエピソードを、後にベストセラーとなったリンチの書籍の中で「花を引き抜き、雑草に水をやる」という言葉で喩えています。
そして、この言葉がウォーレン・バフェットの目に留まり、バフェットがリンチに直接電話をして、バフェットの会社バークシャー・ハサウェイの年次報告書でリンチの言葉を引用したいという依頼が来るなど、投資の格言としても有名となりました。