携帯電話会社からの脱皮が必要なソフトバンク
大手企業も続々と参入に意欲を見せています。2023年6月29日日本経済新聞が、ソフトバンクグループの子会社ソフトバンクが、生成AIを開発すると報じています。
ソフトバンクは5月10日に行われた決算説明会において、AIをインターネットに次ぐ第4次産業革命と位置付けました。そのうえで、AIが日常化した社会においては、データセンターなどの情報インフラが不可欠だとしていました。
ソフトバンクはすでにデータセンターの構築を進めており、5月29日にはAIに適しているとされるGPUを開発するNVIDIAと、生成AIと5Gに向けた次世代プラットフォームの構築に向けて協業すると発表しています。
協業体制を構築した狙いは、エネルギー効率の高い共通サーバープラットフォームで生成AIとワイヤレス通信向けのアプリケーションを提供するデータセンターを構築することです。
ソフトバンクはAIに必要不可欠なインフラを構築し、工場の操業や制御、自動運転、ドローン、信号機、ダイナミックプライシングなど、産業や暮らしを支える様々な技術にAIを転用する壮大な計画を立てています。
※決算説明資料より
ソフトバンクにも焦りがあります。2022年度の個人向けの携帯電話事業の売上高は、2兆8,831億円。前期と比較して0.01%しか伸びていません。売上高の半分ほどを占める主力事業は伸びしろが失われているのです。
AIをクラウド化して様々な産業に活用できるプラットフォームの提供という構想には、期待ができます。
NTTは既存の技術のブラッシュアップがカギに
NTTもこの分野では先行している企業の一つです。COTOHAというAIサービスを提供し、チャットボットやコールセンター、議事録作成などのサービスへの転用を促していました。NTTは“軽い”技術の開発に力を入れています。
ChatGPTのパラメータ数は1,750億と言われています。パラメータとは機械学習モデルが、学習中に最適化する変数の数こと。精度が高いものほど、パラメータ数は増えて複雑なものになる傾向があります。その分、電力消費が多いなど負の面が出てきます。
NTTは軽量・小型化した汎用性の高いAIを開発し、転用しやすい形を模索しています。軽いものであれば、小型端末に最適化できます。
産業を支えるインフラの構築を進めるソフトバンク。小型の端末の仕様に耐えられる軽い生成AIの開発に邁進するNTT。AIにおいて2社が進む方向は大きく分かれました。
取材・文/不破 聡