ChatGPTをはじめとした生成AIの急速な普及は、インターネット黎明期を彷彿とさせるものだと、テクノロジー産業が沸いています。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は2023年4月に来日。岸田総理大臣と面会しました。
日本政府が生成AIに対してただならぬ関心を抱いていることをよく物語っています。
国内の企業もこの分野への本格参入を宣言しており、大注目の技術だと言えるでしょう。
薄利多売・高負荷業務になりがちなWeb広告
いち早く取り組んだのが、サイバーエージェント。同社は5月11日に日本語の大規模言語モデルを開発したことを発表。翌週に一般公開しました。
生成AIを使ったことがある人なら感じるはずですが、人間が質問に回答するような優れた能力を持っていることはわかるものの、この技術をいかにして収益化に結び付けるのか。そのイメージが沸かないという人は多いはずです。
サイバーエージェントの狙いは極めて明確。AIによってWeb広告の精度を高めようとしています。
検索するキーワードに沿った広告を表示するリスティング広告や、Webメディアなどに掲載するディスプレイ広告は、利益率の薄いビジネスであることが知られています。
広告出稿を希望するクライアントは、毎月莫大なWeb広告費を投じるものの、サイバーエージェントのような代理店や運用会社は、そこから20%程度の手数料を得ているに過ぎないからです。
広告を一度作成して出稿。そのまま放置しているだけなのであれば、さほど手間はかかりません。手離れの良いビジネスだと言えます。しかし、Web広告はバナーデザインのABテストや、広告文のブラッシュアップが欠かせません。数%のクリック率の変化が、広告成果に直結するためです。
そのため、Web広告の運用会社は成果の高い広告を出すため、常にユーザーが求める内容との最適化を図っています。その工数や手間が非常に重いのです。
サイバーエージェントが開発した「極予測TD」は、広告文を自動で生成するもの。数億を超える検索キーワードすべてに対して、最適なテキストを自動で生成します。
テキスト以外にも、広告効果が高いバナーをAIが判定する「極予測AI」も提供を開始しました。
競合の運用支援も行うことでシェアを拡大できるか
生成AIへの参入は、それがどのように収益貢献するのかを見極めることが重要です。サイバーエージェントのケースでは、広告事業の利益率の引き上げに寄与する可能性があります。
2023年度2Qの広告事業の営業利益率は4.9%。2021年度2Qと比較をすると、4.1ポイントも低下しています。
■サイバーエージェント広告事業営業利益・営業利益率推移
※決算説明資料より
サイバーエージェントは売上高のおよそ半分を広告事業が占めています。生成AIの活用によって運用体制の省人化を図り、営業人員への転換に成功すれば、増収増益効果が高まるでしょう。
同社は2023年4月に広告運用を行う会社に対して、運用支援を行う「次世代Googleマーケティングセンター」を新設しています。Web広告は差別化が図りづらく、競争が激しい業界の一つです。広告の運用負担が重い中小企業は、AIで精度を高め、省人化を高められるサイバーエージェントのサービスを歓迎する可能性もあります。
※決算説明資料より