こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
裁判例をザックリ解説します。
▼ 本日のテーマ
有給って何日連続くらいとれるのか?
早速みていきましょう。
Xさん
「1ヶ月連続の有給をいただきたく」
会社
「(ながっ)それはちょっと…」
「2回に分けてとってください」
「前半だけ認めます」
しかしXさんは無視。1ヶ月休みます。
↓
会社はXさんのボーナスをカット。
↓
Xさんは「ボーナス払え」と提訴。
果たして、最高裁判所のジャッジは?
(時事通信社事件:最高裁 H4.6.23)
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
どんな事件か
高裁のジャッジ
最高裁判所のジャッジ
マメ知識
登場人物
▼ 会社
・ニュースの配信などを行う会社
▼ Xさん
・新聞記者
・入社して13年目くらい
どんな事件か
▼ 1ヶ月連続の有給を下さい
ーーー Xさん、1ヶ月連続で有給をとって何をするつもりなんですか?
Xさん
「ヨーロッパの原子力発電問題を取材します」
Xさんが有給申請したのは【8/20〜9/20】の1ヶ月です。
ーーー 上司、どうですか?有給を認めますか?
部長
「うーん、1ヶ月も休まれるとチョットきついですね」
ーーー なぜですか?
部長
「(あ…あんた誰だよ)。記者クラブの常駐記者はXさんだけなので、1ヶ月も専門記者が不在となると取材報道に支障があるんです。Xさんは科学技術の専門知識があるので、代わりに別の記者を配置することもできないですし」
「なので、有給は2回に分けてとって下さい」
「8/20〜9/3までは有給取得を認めます」
「それ以降については別の時期にとって下さい」
■ 解説
これを時季変更権の行使といいます。会社は【事業の正常な運営を妨げる】と判断したときは「別の時期にとってね」と指示ができるんです(労働基準法39⑤)。その指示が合法かどうかは別のお話ですが。
ーーー Xさん、有給がちょい短くなりましたが、ガマンしますか?
Xさん
「無理ですね。予定どおり1ヶ月間、いってきます」
ーーー ロック!
▼ いい日旅立ち
旅立ちの前日。Xさんは一応、上司に「明日から旅立ちます。重大事件が起きればコチラへ連絡を下さい。旅行日程を切り上げて帰国します」旨伝えました。
そしてヨーロッパに旅立って、ガッツリ9/20まで休みました。
Xさんが休んでいる間は、別の記者がXさんの代わりに担当しました。
▼ お仕置き
帰国後、会社はXさんにお仕置きをします。「有給は〜9/3までって命令したのにそれ以降も9/20までガッツリ休んでるよね」ってことで、
・けん責(コラー)の懲戒処分
・ボーナスを約4万円減らす
というお仕置きをしました。
Xさんはボーナスと慰謝料請求などを求めて提訴。
高裁のジャッジ
高裁
「Xさんの勝ちね」
「ボーナスと慰謝料5万はらいな」
「Xさんがした1ヶ月の有給申請はOK。無問題。なので会社が『一部は別の時期にしてくれ」と時季変更権を発動させたことは違法です」
ーーー どうしてですか?
高裁
「代わりの人を見つけることがメチャむずとは言えないし、Xさんが1ヶ月休んだことで業務に支障が生じたとしても、それは会社の人員配置がおかしいからです」