ESGは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」の頭文字を取った言葉で、企業が持続可能なビジネスを行う上で考慮すべき重要な要素である。2023年のビジネス・トレンドワードとなったESGについては、日経産業新聞による日本の人気講師ランキング3位を獲得した、日本マネジメント総合研究所合同会社の理事長の戸村智憲先生に、「ESG推進のポイントをChatGPTとの対話で読み解いてみた!」で、全体像をわかりやすく解説してもらった。今回は、その中でもややわかりにくいESGのG・「Governance(統治)」について教えてもらおう。
ガバナンスを議論する際の「主語」の違いが分かりにくくさせる原因
――前回の解説では、ESGがいかに重要かを教えていただきました。経営陣にとってはクビに直結する問題であり、ビジネスパーソンにとっても自分の保身・給料・ボーナス・成長・社会からの評価などの問題として、ESGが重要な意味合いを持ち得るものだと知りました。
ESGは環境・社会・ガバナンスの3つから成り立っていますが。もっとも分かりにくいのがガバナンスです。戸村先生はガバナンス(企業統治)について、多くの講演をされていますが、ガバナンスとは何でしょうか?
戸村先生 そうですよね、ガバナンスって、なんか大学教授の方や監査法人の公認会計士さんなどをはじめとした指導にあたる方々も、なんとなく「ふわっとした」理解で、「お互いにボロが出ないように突っ込まない協定」とかでも結んでるのかなぁ~と思うくらい、ぼんやりしてかみ砕いた解説がなかったりしますよね。
今回は語弊や誤解を恐れず、戸村流のガバナンスの整理と解説を以下にまとめておこうと思います。
大学教授・弁護士・公認会計士やコンサル会社の上級コンサルの方々などや、企業経営者・機関投資家・金融機関・大株主などの方々にも指導したり、ディスカッションのコーディネーターになったりする中で、次のような疑問がわくことが多いです。
疑問:「なぜ、同じ『ガバナンス』について論じていても議論がかみ合わないのか?」
この疑問への究極の答えは、ガバナンスの本質にも関わるポイントですが、要するに、ガバナンスを議論する際の「主語」の違いによるものです。
【ガバナンスで議論がかみ合わない「主語」が異なる例(by戸村)】
1)「経営陣が(都合良く)企業体を統治する仕組み」(社長が偉いんだぞ!)なのか
2)「株主が経営陣を含めた企業体を統治する仕組み」(金を出してるやつが偉いんだぞ!)なのか、
3)株主だけでなく幅広くステークホルダー全体を広範に包含した主語(社会正義が一番大事だぞ!)なのか、
……という主語の違いにより、異なる議論の内容・方向性になり得ます。
そこで、私としましては、1)~3)を踏まえたガバナンスの統合的な整理として、以下のようにまとめております。