TwitterなどのSNSやインターネット上の掲示板では、有名人などを対象とする誹謗中傷が飛び交っています。
しかし、実名アカウントによるものはもちろん、匿名で投稿された誹謗中傷についても、投稿者を特定できる場合があります。実際に有名人などが、誹謗中傷をした投稿者を特定して損害賠償を請求する例が散見されるようになりました。
今回は匿名で誹謗中傷をしたことが、どのような手続きを経て発覚するのかについてまとめました。
1. 匿名での誹謗中傷はなぜバレるのか?
SNSの匿名アカウントによる投稿や、匿名掲示板における投稿については、一見して投稿者が誰であるかは分かりません。
しかし、誹謗中傷やプライバシー権侵害など、他人に対して損害を与える投稿については、匿名であっても投稿者が特定されることがあります。
被害者は投稿先のサイト管理者やインターネット接続業者に対して、「発信者情報開示請求」を行うことができるからです。
発信者情報開示請求を行うと、投稿先のサイト管理者やインターネット接続業者から、投稿者の個人情報を得られる可能性があります。
その情報を基に、投稿者に対して損害賠償の請求書を送付し、または投稿者を被告とする民事訴訟を裁判所に提起できるようになります。
2. 発信者情報開示請求の概要
誹謗中傷投稿に関する発信者情報開示請求は、サイト管理者に対して行うものと、インターネット接続業者に対して行うものの2つに大別されます。
被害者は、誹謗中傷が投稿されたサイトの管理者に対して、投稿者に関する情報(=発信者情報)の開示を請求できます。
サイト管理者が投稿者の個人情報を保有していれば、その情報の開示を受けられます。
ただし匿名掲示板などでは、サイト管理者は投稿者の個人情報を保有していないケースが多いです。
その場合は、投稿に紐づいたIPアドレスの開示を受け、IPアドレスから投稿に用いられた端末のインターネット接続業者を特定します。インターネット接続業者に対して発信者情報開示請求を行えば、端末の契約情報から投稿者を特定できる可能性があります。
従来の制度では、サイト管理者とインターネット接続業者に対する発信者情報開示請求を、それぞれ別の手続きで行う必要があったため、投稿者の特定まで長期間を要する点が問題視されていました。
そこで、2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法では、新たに「発信者情報開示命令」の制度が設けられました。裁判所に発信者情報開示命令を申し立てると、2つの発信者情報開示請求を実質的に1つの手続きで行うことができます。
誹謗中傷を投稿する側にとっては、被害者によって特定されてしまうリスクがいっそう高まったといえるでしょう。