物価高、コロナ禍により、消費生活が変わっている昨今、買い物という体験で得られる価値も変わってきている。消費者からしてみれば、「安くて良いもの」は嬉しい価値だが、同時に楽しみやエコなどの価値も得られれば、生活はより充実する。今後は消費者として「何のためにそれを買うのか?」を改めて考えると同時に、提供側としては「何のために販売するのか?」の吟味も必要になるだろう。
今回は、2社の提供する新たな価値を紹介する。
コーヒーやチョコレートのフードロス削減に貢献〜ネスレ日本
ネスレ日本が、リユースショップのセカンドストリートとコラボレーションし、2023年4月21日(金)から7月13日(木)まで、全国のスーパーセカンドストリート5店舗で「エコアクションキャンペーン」と題して特徴的な売り場を展開している。
取り扱うのは、「ネスカフェ」や「キットカット」などのネスレ日本製品と、セカンドストリートで買い取ったライフスタイル雑貨だ。
ネスレ日本が販売するのは通常、流通するものとは異なり、納品期限を超過したものだという。
納品期限とは、スーパーマーケットなどの食品業界特有ルールによるもので、俗に「1/3ルール」とも呼ばれる。製品の製造日から賞味期限までの期間を3等分し、最初の3分の1をメーカーから小売店に納品する「納品期限」とし、次の3分の1を小売店で販売できる「販売期限」とする。
納品期限を過ぎても賞味期限までは、まだ日数があるため、当然、まだ食べられるし、販売も問題ないはず。けれど、長年の慣習から納品期限を過ぎると出荷できないものも出てくる。場合によってはそのまま廃棄に回されることもあるという。今回、同社はその行き場をなくした食品たちを救う試みを行った。
価格は、通常よりやや安価に設定されていることから、消費者は「良いものを安価に買える」と「フードロス削減へ貢献できる」の両方の価値を得られることになる。
同社の飲料事業本部 部長 髙岡 二郎氏は、次のように本企画への思いを話す。
「今回の企画は価格訴求ではなく、あくまで食品ロス削減を啓発するために行いました。食品飲料企業として、『生産者の方の想いを無駄にしたくない、持続可能な未来を作りたい』という思いから、本企画は生まれました」(髙岡氏)
同社は存在意義「パーパス」として「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」を掲げ、顧客やペット、社会に対して高品質で安全な食品・飲料の提供をすることを目指している。今回の施策もその一環だという。
「賞味期限は知っているものの、納品期限については知らない方がほとんどだと思います。今回の企画をきっかけに、まずは多くの方に『まだ飲めるのに、食べられるのに廃棄せざるを得なくなっている製品』の存在を知っていただきたいと考えています。また環境に配慮したアクションを行いたいものの何から始めたらよいかわからないという方に、まずは身近なコーヒーやチョコレートを買うことから始めてほしいと思います」(髙岡氏)
またメディアリレーション室アシスタントマネージャー 小川直子氏は次のように話す。
「1/3ルールは業界全体の問題でもあるため、一般のお客様や他のメーカー、業界関係者の方にもメッセージが届いて、輪が広がればいいなと思います」(小川氏)
同社は全国5店舗での反響と売り上げの比較を行い、今後の施策に役立てていく。