事業者が対応すべきこと
事業者としては、どのような対応が必要になるか、森中氏に契約締結に関して必要になる主な対応を挙げてもらった。
●不当な勧誘行為の類型の確認・周知
「改正により、不当な勧誘行為の類型が増えたため、どのような場合に取り消されるのかを確認し、営業社員等に周知することが重要です。また、契約の勧誘や締結を外注している事業者においては、外注先にも改正消費者契約法を理解しているのか確認することも重要です。
昨今では、ESG投資の広がりや、SDGsの観点から、サプライチェーン全体のコンプライアンスが求められるようになっており、サプライチェーンの末端に至るまで責任を果たす必要が出てきています。そのため、外注先の行動にも気をつけていただく必要があります」
●契約書の条項や利用規約の条項の改定
「当然のことながら、契約書の条項や利用規約の条項についても、改正消費者契約法に合わせた条項に改定する必要があります。
例えば損害賠償責任の一部を免除する契約条項は、事業者が軽過失の場合にのみ適用されることを明確にする必要があります。
例として『当該コンテンツに起因して、当社の軽過失により、お客様もしくは第三者に損害が発生した場合、当社は1万円を上限として、お客様もしくは第三者に賠償いたします。』といった利用規約は有効になるものと思われます。ただし、他の条項との関係や別の理由などで責任を負う可能性は否定できませんので、契約書や利用規約全体を顧問弁護士等にチェックしてもらうことをおすすめします」
●解約料の説明の努力義務についての対応
「解約料の説明の努力義務については、あくまで努力義務ですので、説明しなかった場合の制裁等は設けられておりませんが、説明しなかったという事実が公表されたりすれば、場合によっては当該企業は消費者契約法を遵守していない会社だというレピュテーションリスクを負ってしまう可能性もあります。説明できるように事前に準備し、また、誰が説明するのか、例えば現場の社員なのか、法務部の担当者なのかなどについて、社内マニュアルを整備することが望ましいといえます」
今回の改正により、消費者はより安心して契約できるようになったといえる。また森中氏の指摘通り、事業者にとってはしかるべき対応をすることで、より良い事業者になる契機といえそうだ。
【取材協力】
森中 剛氏
第二東京弁護士会所属。一橋大学法学部法律学科卒業。Authense法律事務所所属。
裁判官を退官後、福岡県にて弁護士登録。顧問弁護士として予防法務のみならず、裁判官の経験を活かした訴訟対応も得意としている。中小企業だけでなく大企業や公的企業の顧問実績を有し、その見地から多面的かつ実践的なアドバイスを提供。企業が直面する多様なビジネス課題に対し的確な解決策を提案し、支援を行っている。
https://www.authense.jp/lawyers/lawyer_morinaka/
文/石原亜香利