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何がどう変わった?消費者契約法改正によって消費者が享受するメリットと事業者に求められる対応策

2023.06.22

消費者を守る消費者契約法の改正法が、2023年6月1日から施行された。消費者保護に関するルール変更が行われたが、果たしてどのような点が変わったのか。Authense法律事務所の弁護士である森中 剛氏に聞いた。

消費者契約法の改正によってどう変わる?

消費者契約法とは、消費者と事業者との間で締結される契約について、消費者の利益を守るために定められた法律だ。その法の内容が拡充され、改正法が2023年6月1日(一部を除く)より施行された。

主な改正内容について、森中氏は次のように解説する。

「事業者が勧誘する旨を告げずに退去困難な場所へ消費者を同行して勧誘した場合や、第三者に相談しようとする消費者を脅して妨害した場合などが、新たに契約の取消事由に追加されました。

また免責の範囲が不明確な条項が無効になったり、解約料の説明や契約に関する情報提供などの事業者の努力義務が拡充されたりしました」

●法改正によってどう変わる?

法改正を受け、消費者と事業者にはそれぞれどのような変化が起きるのだろうか。

「この改正は、消費者契約に関して現在の環境変化を踏まえた改正であり、より消費者が安全、安心に取引ができるように事業者側に義務を課したものとなります。消費者側からすれば、今まで救済されなかったものについても救済の道が開かれることになります。

事業者側からすると義務が増えたり、対応が必要になったりするなど、大変のようにも思えますが、コンプライアンス重視という観点からは積極的に対応し、消費者保護を図っているという姿勢を示すことで、ESG投資等にもつながっていく可能性があります。つまり、成長のチャンスになる可能性もあると考えられます」

注目すべき改正点3つ

先に森中氏が挙げた主な改正点について、それぞれ解説してもらった。

1.契約の取消権の追加

「改正前も、事業者が、事業者と個人との間の契約である『消費者契約』の勧誘をする場合に、消費者に対し、不当な勧誘行為をしたことにより、消費者が困惑し、その結果、消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示をした場合には、消費者側から契約を取り消すことができる旨が、消費者契約法4条3項に定められておりました。これについて、改正後は昨今の消費者契約を取り巻く環境の変化を踏まえて、消費者が安全・安心に取引できるよう、消費者が困惑してしまう可能性の高い事業者の不当な勧誘行為を追加し、契約を取り消せる範囲を拡大しました」

●追加された行為

「次の3つの行為により、消費者が困惑して契約を締結した場合にも、取り消すことができることになりました」

(1)消費者契約の勧誘であることを告げずに、退去困難な場所に同行して勧誘する行為(消費者契約法4条3項3号)

「退去困難な場所とは、遠方まで連れて行かれたなど、帰りの交通手段がない場所などを指すとされています。これまでも退去妨害された場合の取消権は規定されておりましたが、消費者が任意に退去の意思を示したにもかかわらず、妨害した場合に限られており、退去妨害の規定を適用できない事例が増えてきたため、新設されたようです」

(2)威迫する言動を交えて、勧誘する場所で消費者が第三者等に相談するための連絡を妨げる行為(消費者契約法4号)

「契約するかどうか、親や知り合いに相談したいと事業者に言ったところ、事業者の高圧的な態度や、言動により連絡を妨げられて、契約を締結してしまった場合などが該当します」

(3)契約締結前に目的物の現状を変更し、その回復を著しく困難にする行為(消費者契約法9号)

「改正前も、事業者が契約締結前に事業者の契約上の義務を先に実施してしまい、消費者に契約を締結せざるを得ない状況を作り出した場合に取り消すことができる規定がありましたが、事業者が契約上の義務でないサービスや行為で、契約の目的物等の現状を変更し、元に戻せなくすることで、消費者に契約を締結せざるを得ない状況を作出する事例が発生するようになったことから、このような場合にも取り消すことができるようにしたものです。

例えば、事業者が不用品買取のために消費者宅を訪問した際に、消費者がネックレス等を見せたところ、そのネックレス等を切断しないと十分な査定ができないとしてすべて切断され、消費者は売らざるを得なくなってしまった場合等が該当します」

2.解約料の説明の努力義務

「消費者契約法9条2項が新設され、事業者は契約書で定めた契約解除に伴う損害賠償額の予定や、違約金を定める条項に基づいて、損害賠償や違約金の請求を行う場合、消費者から説明を求められた場合には、この損害賠償額や違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努力しなければならないことになりました。

改正前においては、損害賠償額の予定や違約金の条項について、同種の契約の解除に伴って事業者に発生する『平均的な損害』を超える部分については無効とされていました。例えば、消費者が負う違約金が高すぎる条項があった場合、解除に伴う平均的損害を超える部分については無効となります。

しかし、消費者にとっては違約金の額などについて、そもそも不当に高額なのかどうかわからず、そのような条項が無効となるものかどうか判断することが困難でした。そこで消費者に判断材料を与えるために、事業者に説明するよう努力する義務を課しました」

3.免責の範囲が不明確な条項の無効

「消費者契約法8条3項が新設され、事業者の債務不履行等により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免責する条項について、『事業者の重過失を除く過失による行為にのみ適用される』ということを明らかにしていない不明確な条項は、無効となりました。

改正前においても、事業者の故意または重過失による損害賠償責任を免除する条項は無効とされていましたが、実際の契約書では、『法令に反しない限り』等の文言を付け加えることで、免責の範囲をあやふやにしている条項が見受けられましたので、事業者の責任範囲を明確にする趣旨で設けられました」

改正に伴う消費者のメリット

今回の改正で、消費者にはどのようなメリットが生まれたのだろうか。

●契約を取り消せる類型が増加

「契約を取り消すことができる類型が増えたことは、消費者側にとって大きなメリットと言えます。この改正は、国民生活センター等に寄せられた、実際にあった不当な勧誘行為をもとに作られていますので、今後、同種の不当な勧誘行為により契約を締結させられたとしても、あとで落ち着いて第三者に相談したりすることで、契約を取り消せるようになります」

●消費者の保護がより厚くなった

「事業者の免責条項について、事業者の軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは無効となります。例えば、『法令に反しない限り、1万円を上限として賠償いたします』などの条項は無効となると考えられています。つまりこのような条項がある消費者契約で消費者に損害が発生した場合、このような条項が無効とされることで、損害額については法令に基づいて算定されることとなります。よって、改正前より消費者の保護が厚くなると考えられます」

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