料金プランの見極め、見直しは必須!
房野氏:ARPUが上がっているという話でしたが、auで上げるのとUQ mobileで上げるのと、どっちが簡単でしょうか。
石野氏:auでARPUを上げるというよりも、今だと「UQ mobileに入るかauに入るか」という感じで、auに入れば自然とARPUが上がる。auの中でARPUが上がるってことはあまりない。
法林氏:auでARPUを上げようとすると、1月にあった実質段階制の値上げみたいなことになる。
石野氏:「スマホミニプラン」ですね。
法林氏:2階建ての上の階に上げろってことで、できるだけ使い放題プランに行ってほしい。
石野氏:今でいうと、UQ mobileで契約してもらい、最終的にはauへ移ってもらうようにする。ソフトバンクも同じ。今、ソフトバンク回線の品質の評判が上がってきているので、Y!mobileを導入にしてソフトバンクへ移ってもらう。ドコモはahamoで取ってギガプランに行ってもらおうとしている。
法林氏:ドコモの事情はちょっと違うけれど、auとソフトバンクが採っている手法は、割とうまくできている。当然、両社ともに契約数を増やさないといけないんだけど、auを解約しそうな人はUQ mobileでとりあえずフォローする。ソフトバンクも同じで、ソフトバンクが高額という人はY!mobileでフォローする。UQ mobileやY!mobileを使っている人が20GBを超えるようになってきた時に、auに移行してもらって、使い放題に変えて良かったと思わせる。ユーザーは「1か月数千円増えただけで済んだ」という話になる。
石川氏:ショップにソフトバンクとY!mobileの両方の看板が出ているのは、お店の中でぐるぐる回しているから。
房野氏:携帯電話料金の値下げを旗印に、20GBのahamoなどの料金プランが各社から出てきました。仮にahamoで契約した後にドコモへ移ったら、結局、ご家庭内の携帯電話料金自体が下がったことにはならないですよね。
法林氏:それは値上げになるんですが、逆の話もあるんです。auとUQ mobile、ソフトバンクとY!mobileの話と非常に対照的なんですが、ドコモの場合は、ドコモからahamoに変わってもあまり料金が下がらないことがあるんです。例えば「ドコモメール持ち運び」を利用すると、段階制のギガライトを使っている時と値段があまり変わらない。ドコモメール持ち運びの利用料が月額330円と結構高いんです。ahamoってあくまでも中容量プランでしかない。
石野氏:絶対値で見ればahamoはそんなに安くない。20GBとしては安いけど。
法林氏:メールアドレス持ち運びの利用料も付けると、結局3000円ちょっとになって、セキュリティサービスや、端末補償も付けると4000円を超えることもある。
石野氏:「大盛り」を付けた日にはもうギガホとたいして変わらない。
法林氏:使わないサービスは不要という人にとってahamoはメリットがあるけれど、あれこれ付けてドコモからahamoに行くとあまり安くならないです。
石川氏:ahamoは元々Z世代向けのプラン。例えば家族割を利用していた子どもが新社会人になるタイミングで家を出るケース。自分でケータイ料金を払わなきゃいけない、どこで契約する? じゃあY!mobileで……という流れがあったので、それを止めるためのahamoだったりもする。ahamoは自分1人で契約する、メールアドレスもいらないという人に向けた商品なので、昔のサービスを引きずろうとすると高くなって割安感がなくなる。
法林氏:本来のターゲットではないシニアなどでそれなりに容量を使う人が、ahamoが安いと思って利用してみると、全然安くないっていうトラップ。これがUQ mobileとかY!mobileだと失敗がないというか、「これくらいの容量を使うからこのプラン」という感じでちゃんと選べるようになっている。
房野氏:auユーザーで料金が高いと思っている人が、UQ mobileに変えた時に割安だと実感できますか?
法林氏:できますよ。
石野氏:auからUQ mobileだったらガクンと下がりますよね。
法林氏:メールアドレス持ち運びの利用料は注意。300円プラス税でこれは結構、高い。
房野氏:今、auを契約している人はもちろん、5年くらい前のプランのままになっている人は見直しをした方がいいですね。
法林氏:速攻見直しです。でも、見直していない人がめちゃくちゃ多い! それもあって、UQ mobileの料金プラン説明会の時に、僕は「前のプランからユーザーを移行させることができるのか」と質問したんですよ。今までも全然できていないんですよ。
房野氏:自分の契約を何年も寝かしっぱなしの人はプラン変更を検討した方がいいですね。
石川氏:もちろん。
石野氏:機種変更の時に提案されたりはするんですけどね。
法林氏:ところがコロナ禍でショップに行かなくなって、オンラインで端末を買う人が増えているとはいえ、すごく増えているわけではないので、プランの見直しがされていないままの人がいるわけですよ。たとえば、ソフトバンクで旧プランのウルトラギガモンスターやメリハリプランのままで、「50GBしか使えなくて困っている」っていう人がいるわけですよ。プランを見直すべきです。「ショップに行くのは予約が必要ですよね」というけれど、料金プラン変更はオンラインでできますから。そういうレベルの人が世の中にごまんといるわけですよ。
石川氏:キャリアからすると、そういった人に気づいてほしくないってことがあるんでしょうけど(笑)
法林氏:とにかく、料金プランを2年、3年と放置している人は、一応、確認した方がいいです。メールアドレス持ち運びの利用料とかケータイ補償の継続とかの増額要素は計算に入れつつ、場合によってはauからUQ mobileとか、ソフトバンクからY!mobileとか、もちろん逆もありですけど、検討してみるといいと思います。
……続く!
次回は、通信キャリアの決算について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子