あらゆる部分が「及第点」
『Olike TWS T101』は、見ての通り第2世代のAirPodsに見た目が似ている。
ケース込みの連続稼働時間が最大20時間、イヤホン単体のそれは最大5時間と、スペックも第2世代AirPodsにかなり寄せている。しかしBluetoothのバージョンは5.3と、部分的に新しいものを組み入れている。
実際に使ってみると、その音質は「並」だ。
ガジェットレビュー記事で「並」とか「普通」などという単語を使ってはいけないのだが、この記事はガジェットレビューを越えたところを目指しているので、ここは敢えて禁忌に踏み入れようと思う。
とにかく、中音の伸びも高音の広がりも低音の響きも「及第点」に留まっているのだ。音質が売りのハイエンド製品にはまったく太刀打ちできないが、それでも普段使いのガジェットとしては十分なパフォーマンス。そして値段も鑑みると、傷だの汚れだのは一切気にせずガンガン使うことができる。
この低価格なら、日本のコンビニで販売されていてもいいのではないか。Ankerの製品のように。
最初は「謎のメーカー」だったAnker
モバイルバッテリーで有名なAnkerの創業は2011年である。
ここから数年後のAnkerの製品を、筆者はよく覚えている。確かに安くていいものではあるがメーカー自体がまだ無名だったため、印象としては「Amazonによくある謎メーカーの低価格品」という具合だった。
それがいつの間にか、そして驚嘆すべき早さでAnkerはモバイルバッテリー分野の巨人になった。
そのようなことは、今後も当然起こるはずだ。今は東南アジアのローカルブランドに過ぎないOlikeも、数年後には日本のコンビニで見かけるようになるかもしれない。
「高クオリティーのローエンド製品」は、実は日本でこそ巨大な販促が見込めるのでは……と筆者はおぼろげに考えている。
その理由は、日本は決して若い国ではないからだ。
現代日本と「ローエンド製品」
インドネシアは若年世代の割合が多く、それ故に「新しいもの・新しい仕組み」が一度評判になれば、それがあっという間に全国各都市へ広がる。
古今東西、どこの国でも流行の最先端を牽引するのは10代及び20代。たとえばスマホにしろ、彼らは多少の無理をしてでも先鋭的な性能を有するハイエンド機種を求める。若者の活力があれば、ローンの返済など怖くはない。
が、高齢者の多い国ではそうはいかない。スマホを購入する際も「私はまだスマホを操作することはできないから、これから購入する機種も安いもので構わない」と店員に告げる人は少なくない……というより、そのような人が大多数である。
もしもその人がワイヤレスイヤホンを使ってみようと思い至った場合、重視するのは最高クラスの音質やラグを全く感じさせない通信速度などではなく、「とりあえず自分の手に収まり、値段も手頃なもの」のはずだ。
そのようなお国事情を知った新興国のガジェットメーカーが、一足飛びで日本に上陸する……という出来事も十分に考えられる。
【参考】
Olke
https://olikeindonesia.com/
取材・文/澤田真一