■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、Google I/Oで発表されたグーグルの新端末について話し合っていきます。
Pixel Foldは大画面Androidデバイス再興への布石?
房野氏:2023年5月11日(日本時間)に、グーグルのデベロッパー向けイベント「Google I/O 2023」が開催されました。石川さんは現地にも取材に行かれていましたが、いかがでしたか?
GoogleとAlphabetのCEO、サンダー・ピチャイ氏
石川氏:Google I/O全体を通して、AIを前面に押し出していました。世間的には〝ChatGPT〟に圧倒されているイメージが付いてきているので、グーグルも昔からAIに取り組んでいるということをアピールしていましたね。端末で言うと、ミッドレンジの「Google Pixel 7a」、折りたたみの「Google Pixel Fold」、タブレットの「Google Pixel Tablet」を発表。Pixel 7aは、日本でも発売済みで、今回からKDDI、ソフトバンクに加えてドコモでも取り扱われるので、3社で競争していくと面白いかな。Pixel Foldに関しては、OSとの親和性が注目。公式アプリも50個ほど作り直したとのことなので、使い勝手が気になるところです。
石野氏:Pixel Foldは、画面を開くと横長になるのが新しい。OPPOの折りたたみスマートフォンも同じ仕様ですが、日本では発売されていませんし、Galaxy Foldシリーズは開いても縦長です。グーグルも、「開くとタブレット」という表現をしています。
石川氏:そうですね。ノートPCのようにも使えるし、電子書籍なども読みやすい比率になっているので、Galaxy Foldとはまた違う使い勝手になると思います。
石野氏:Galaxy Foldは、例えば漫画アプリを開いても、そのままだと見開きにならなくて、横向きに持ち替えないといけない。Pixel Foldは、開くとそのまま見開きになるので読みやすいですが、そもそもアプリ側が対応するのかが気になります。
法林氏:標準プラットフォームとして、グーグルがやることに意味がある。これからあの形に揃えていくことになります。スマートウォッチシリーズと同じことです。
石川氏:そう。グーグルがやることに意味がありますよね。大画面に対応したアプリを作ってもらうためには、Galaxyだけでは足りないので、〝グーグルがやるならやる〟というか、やるべきという流れを作れるのが大事です。タブレットもあるので、大画面対応アプリが増えるといいですね。
房野氏:Pixel FoldやPixel Tabletも、搭載OSはAndroid 13ですよね?
石野氏:そうです。1世代前では、大画面デバイス向けの「Android 12L」というものがありましたが、そっちのほうが特殊。本流のAndroid 12と分けて12Lという別のバージョンを出しましたが、Android 13では統合しています。タブレットにインストールすると大画面向け、スマートフォンにインストールすると小さい画面向けのOSと、自動的になります。
房野氏:アップル製品でいうと、iPhoneにはiOS 、iPadにはiPadOSといったように分けられていますが、Androidは分けなくても操作性に問題はないのでしょうか。
法林氏:それは折りたたみだからという話ではなくて、考え方の違い。iPadは、iOSの機能を拡張して使うために、あえてiPadOSに分離している。これは裏テーマとして、iPadOSはmacOSに近づいていきたいんじゃないか、と言われています。
あくまでも、〝Android ○○〟と呼ばれているものは、基本的にベースは同じで、その上に何を乗せるのかという話。今回のスマートフォンとタブレットに関しては、どちらにも同じものが乗るという形で、あとはアプリ側が画面サイズに対してどう対応するかだけ。さっき石野君が言った通り、開いたときにどういう画面になるのかは、アプリ側の仕事なので、OSの仕事ではありません。
石川氏:グーグルとしては、大画面デバイスに関しては、キーボード付きだとChromeがある。Android 13では、大画面デバイスで、下からメニューを表示してアプリを切り替えたり、画面を分割して2つのアプリを同時に起動するといった機能に対応している。使い勝手としては、〝慣れれば使いやすいかな〟くらい。Android OSだからこそ便利だなと思える機能があるのかは、実際にしばらく使ってみないとわかりませんね。
法林氏:あと、Pixel Tabletで特徴的だったのは、充電台に乗せるとGoogle Nestシリーズみたいになるというところ。今までほかの会社はやらなかった、ホームデバイスとしての切り口は新しいし、欲しい人はいると思います。
石野氏:アップルがコンピューターと強調しているのに対して、グーグルはNestシリーズを持っていて、ホームIoT的な分野だとアップルよりはるかにシェアが高い。タブレットではiPadに負けている中で、うまく自分たちの資産を使って、Androidタブレットを再起させようとしているのは面白いですよね。
石川氏:もっと早く着手するべきだったとは思ってしまいますけどね。
法林氏:Pixel Tabletは、Wi-Fiモデルしかない。こういう部分も、割り切っていていいなと思います。
石川氏:家で使う前提ですからね。それにしても、7万9800円の価格設定は少し高いかなあ。Androidタブレットにそれだけの価格を払う気もしない。
房野氏:値付けは、安価なことで有名なChromebookへの配慮みたいな部分もありますかね?
法林氏:Chromebookは価格に相当幅があるからね。そういうわけではないと思いますよ。
石川氏:価格というよりは、使い方の差ですよね。Chromebookにはキーボードとかペン入力を任せるとして、じゃあAndroidタブレットと相性のいい場所はどこ、家だ。という感じ。一方で、Nest Hubの存在意義がなくなってしまう。
石野氏:とはいえ、7万9800円と言われると、キーボードやペンも欲しくなってしまいます。
法林氏:でも、Google Storeのキャンペーンで1万3000円分のストアクレジットがもらえる。今回のキャンペーンもすごくて、Pixel 7aは1万円、Pixel Foldは5万2000円分もついてきます。
石野氏:Pixel Foldを買ったら、Pixel 7aが実質1万円くらいで買える計算になります。
法林氏:そこはすごいよね。Pixel Tabletも充電台込みの値段なので、そう考えれば、高すぎるとは言えないと思うよ。
石野氏:ただ、Google Storeのストアクレジットが5万円分もらえたとしても、使い道があまりないんですよね。Pixel Foldを買った人がPixel 7aを買うとは思えないし……。
法林氏:いやいや、Pixel Watchもあるし、家族分のPixel Budsを買ってもいいじゃん。
石川氏:Amazonギフトにしてくれないかな(笑)。それか、Google Workspaceの支払いに使えるとうれしい。
石野氏:Google Oneの支払いでもいいですね。ハードウエアだけとなると、選べるデバイスが少なすぎます。
石川氏:翌年まで塩漬けになっちゃうよね。
法林氏:毎年Pixelを買えば、Google Workspaceが実質無料になるキャンペーンとかがあってもいいかもね。ただ、グーグルからすると本末転倒な気もする。