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業務命令に従わない社員を大きな声で叱責…管理職なら知っておきたいパワハラ〝じゃない〟裁判事例

2023.06.20

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。

パワハラ【じゃない】裁判例をザックリ解説します。

部下のXさんが「パワハラだ!」と訴えたのは、上司Yの以下の行為


・書類作成を「やれ!」と怒鳴られた
・書類を「探せ!」と怒鳴られた
・自分を会議に呼ばなかった
・個人的な感情で査定を下げてきた
・他の社員がミスしたのに対応を押しつけてきたなど


ーーー 裁判所さん、どうですか?

裁判所
「パワハラじゃないですね」
「怒鳴ったしても、まぁ違法じゃないですね」
「くわしくは続きを見てね」

というわけで、どうぞ!
(タイガー魔法瓶事件:大阪地裁 R4.10.26)

※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換

登場人物

▼ 会社

・魔法瓶や炊飯ジャーなどを販売する会社

▼ Xさん(女性)

・顧客からの問合せやクレーム対応の仕事

▼ 上司Y

・Xさんの直属の上司

どんな事件か

5つの事件を抜粋してお届けします。

▼ 書類作成を「やれ!」事件

Xさん
「上司Yが受付表の作成を指示してきました」
「私が断ると『やれ!』と怒鳴ってきました」

ーーー 上司Yさん、不服そうですが

上司Y
「私は上司として正当な指示を出しました。なのにXさんはヒステリックな大声で反発してきました。私は淡々と『業務指示としてやりなさい』と告げたにすぎません」

ーーー 裁判所さん、どうですか?

裁判所
「上司Yの指示は正当です」

ーーー Xさんは『やれ!』と怒鳴られたと主張してますが?

裁判所
「怒鳴った証拠がないね。かりに怒鳴ったとしても、怒鳴るに至った経緯に照らせば、当不当の問題は別として違法とまではいえない」

注目!
怒鳴りも状況によってはOKになる可能性がありますね。

▼ 書類を「探せ!」事件

写真はイメージです

Xさん
「訂正原稿を紛失したのは同僚のAさんだったんです。上司Yは私が紛失したと決めつけて『探せ!』と声を荒げて怒鳴ってきました。4ヶ月後くらいにその書類が倉庫から発見されました。なのに上司Yは私に謝罪しませんでした」

ーーー 裁判所さん、どうですか?

裁判所
「本件状況からして、上司Yが『書類を持っているのはXさんの可能性がある』と疑うのはごく自然のこと。なので書類を探すように指示したことは違法じゃない。謝罪する義務がないので謝罪しなかったことも違法じゃない」

■ 感想
上司Yは「怒鳴ってないですけど」と反論してましたが、先ほどと同じく「探せ!」くらいならセーフの可能性ありですね。

▼ 打ち合わせでキレた?

Xさん
「上司Yは私に『査定を下げた』と言いました。理由は私が【部内の打ち合わせでキレた】というものでした」

ーーー 裁判所さん、どうですか?

裁判所
「上司Yがそんな理由を伝えた事実は認められません。証拠によれば、上司Yは以下のことを告げたにすぎません」


上司Yが告げたこと 

・あなたの査定が下がった要因は、他の社員に対する感情的なコミュニケーションが改善されていないこと(以前から注意していたでしょ)、打ち合わせのときに「これから言われたことしかしない」と発言するなど非協力的な態度がみられたことにある

・会議中に書類を机に叩きつけるような言動は社会人として評価できない


裁判所
「なので、上司Yが自分の感情でXさんの査定を下げたと伝えたとはいえない」

▼ 会議に呼ばれなかった事件

Xさん
「ある担当者が退職したので、私が新システム構築の【定例会議の後任】に指名されたんです。なのに、上司Yは会議の招集から私の名前を外し、それ以降の会議にも呼ばなかったんです」

ーーー 裁判所さん、どうですか?

裁判所
「うーん、4回呼ばなかったけど、それ以降の会議には呼んでるよね。なので嫌がらせじゃない。そもそも、会議にXさんを参加させるかどうかは、基本的にはマネージャーである上司Yの判断に委ねられている。その判断が不合理だったとはいえない」

▼ ケツふきをやってくれ!事件

Xさん
「私が担当すべき業務以外の仕事を強要されました。上司Yは、FAXを処理すべき社員がいることを知りながら私に対して『やってくれ!』『誰かがやらないとけないだろう!』と言ってきました」

ーーー 上司Y、どうですか?

上司Y
「発した言葉は『誰かがしないとけないだろ』『そんなに嫌ならしなくていい』ですけどね…」

ーーー 何があったんですか?

上司Y
「XさんがあるFAXを発見したんです。荷物が顧客に届かないというトラブルが書かれていました。大元のミスをした社員が休暇をとっていたので、私はXさんに対応を指示しました」
「するとXさんは『私がするんでしょうか』と言ってきたので、私は『誰かがしないとけないだろ」『そんなに嫌ならしなくていい』と言いました」

ーーー 裁判所さん、これはパワハラですか?

裁判所
「パワハラじゃないですね。上司Yが指示した内容は【顧客に電話をする】というチョ〜簡単なものであったことからすると、誰に指示を出すかはマネージャーである上司Yの判断に委ねられていたといえる。なので、この指示はXさんへの嫌がらせじゃない

とうわけで、全てパワハラ【じゃない】と認定されました

(Xさんはあと5つくらいの事件も挙げてパワハラだと主張しましたが、裁判所はすべて「パワハラじゃないね」と認定しています)

さいごに

一般的に言って【正当な業務命令 → イタイ部下が従わない → 大きな声を出す】ならセーフになる可能性ありです。イタイ社員へガツンと雷を落としたいと時ってありますもんね。

ただ、ちょっとした言葉づかいで違法に転ぶ可能性があるので発言には注意しましょう。

「クズ」「バカタレ」「ボケ」とか言っちゃうとアウトです。コチラもどうぞ。

損害賠償、懲戒請求、パワハラ、上司弁護士vs部下弁護士によるドロ沼訴訟合戦の行方

こんにちは。 弁護士の林 孝匡です。 宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。 裁判例をザックリ解説します。 両者リングへ。・・・・・・ファイト! 経営者...

「パワハラって何?」については私のサイトにも詳しく書いてます。気になる方は下記URLからどうぞ。ではまた次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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